不動産トピックス
今週の一冊
2021.09.21 14:11
終戦直後の占領期、地方のビル接収は?
占領下日本の地方都市-接収された住宅・建築と都市空間-
編者:大場 修
発行日:2021年5月26日
発行所:思文閣出版
価格:7500円(税別)
大戦後の占領期。戦後の復興都市計画は豊富な研究蓄積があるが、占領期の建築や都市の関係を視点に据えた研究はほとんどないという。
戦後76年、戦時中や戦争直後の様々な情報はメディアにも多く取り上げられ、高齢者という生き証人の言により我々は自然に触れているといえるが、なぜか占領期となると、そういえば埋もれては我々の記憶の合間に埋もれていないだろうか。
本書は「近過去でありながら忘れられ、顧みられることが少ない、時には忘れたいとも願う占領下の記憶と歴史の掘り起こし」、まず各都市の報告を取りまとめ、日本の占領空間が地方ごとにいかに異なる様相を呈していたのか輪郭を浮き彫りにする狙いというが、まさに書籍とはそういうものだ。埋もれがちな分野に光を当て、研究者の地道な報告書をしっかりと評価し、世に伝え記録する姿勢に尊敬と感謝を。編者による占領軍調達史から始まり、占領下日本の占領軍家族住宅、ホテル接収、札幌、山形、日光、名古屋、琵琶湖畔、京都、第10章「想定外の占領拠点・大阪」では心斎橋・百貨店の明暗が印象的だ。大阪の百貨店業界の復興は東京よりも早いペースだったのはなぜか。接収ビル一覧も弊紙には貴重な資料だ。時間をかけて読み込む価値のある一冊。