不動産トピックス
クローズアップ セキュリティ編
2021.10.04 10:51
オフィスや住居等へスマートロックや電子錠の普及が進んだ。もはや「鍵」としての範ちゅうに留まらず、ビルの管理システムやセキュリティと連動する設備となった。昨今は顔認証システムの普及も進み、採用次第でビルの資産価値向上にも繋がった。
クマヒラ/パナソニック クラウド顔認証で管理する顔認証・鍵管理サービス開始
クマヒラ(東京都中央区)は先月29日、パナソニック システムソリューションズ ジャパン(東京都中央区、以下パナソニック)と共同で、オフィスビル等のシリンダー鍵(物理的な鍵)をクラウド顔認証で管理する顔認証・鍵管理サービスの開始を発表。クラウド顔認証による管理サービスの見積り・受付は、今年12月開始を予定する。
クマヒラとパナソニック システムソリューションズ ジャパンとの今回のサービス開始は、今年3月に共同で発表した「現場センシングソリューション」パートナーとの事業共創の一環。クマヒラは入退室管理システムやセキュリティゲート、録画監視システム、鍵管理システム等のセキュリティシステムや金融機関向けの金庫等の設備機器、空間デザイン・プランニング等を展開しており、これらセキュリティに関しての知見に秀でている。施設の鍵管理業務にも携わっており、これまで鍵管理台帳をもとに現場の管理者が行っていた、鍵の保管、利用者の制限、取り出しと返却の記録といった管理業務の手作業を鍵管理サービスで運用・管理することにより、管理の正確性と効率性を高めることができる。
主な特長としては、クマヒラの鍵管理機本体と顔認証専用のカメラを内蔵したパナソニックの顔認証機をシームレスなデザインで組み合わせた、顔認証搭載の新たな鍵管理機であること。個別収納型の鍵管理機と、鍵や重要物の大量保管が可能なオープン収納型の鍵管理機の2種類から、運用や設置環境といった状況に応じて選定ができる。また世界最高水準の顔認証システムにより、鍵の盗難や不正利用を低減している。ICカード等で排除できなかった紛失や不正利用のリスクをパナソニックの顔認証技術によって大幅に低減し、セキュリティレベルも改善された。
またクラウドによる顔認証システムであるため、管理担当者は顔情報の登録や設定を遠隔で行える。現場に管理者がいなくても鍵の受け渡し、返却・保管が可能。またパナソニックの顔認証SaaSプラットフォーム「KPASクラウド」で顔情報の登録や管理を行うため、マンションやオフィスビル、インフラ施設等で拠点専用のサーバがなくても、拠点での利用許可に紐づいた鍵の貸し出しや利用が可能である。
フォトシンスと野村不動産業務提携 Akerunを基盤として不動産領域におけるDX化を推進
IoTを活用したSaaS型サービス「Akerun」を提供するフォトシンス(東京都港区)は、今年6月に野村不動産(東京都新宿区)と業務提携契約を結んだ。以降、野村不動産の展開するサテライト型シェアオフィス「H1T」やスモールシェアオフィス「H1O」等でのID統合やデータマネジメントによるDXの推進を共に図り、更なる不動産価値の向上へ取り組む。
フォトシンスは、主にスマートロックを活用した法人向けの「Akerun入退室管理システム」や既設の自動ドア等を遠隔で操作できる「Akerunコントローラー」等を展開している。利用者及び採用企業の多い「Akerun入退室管理システム」は、既設ドアのサムターンに同製品を取り付けることでドアを簡単に電子錠にするもの。スマートフォンやSuicaやPASMOといった交通系のICカード等を利用して簡単に鍵の開閉ができ、Web上の管理画面からは入退室の記録チェックや鍵権限の付与・剥奪といった遠隔管理も可能だ。大規模な取り付け工事を行う必要がなく、退去時には原状回復工事も必要ない。これら利点が好まれて、入居テナントのフロアエントランスや各個室のドア、シェアオフィス等への設置・採用が増加している。
またH1Tはリモートワーク等に適したサテライト型のシェアオフィスで、都内や郊外、地方展開も進み21年6月時点で提携先を含め86拠点を展開。オフィスに縛られない多様なワークスタイルに適応でき、利便性と快適性を実現した。一方H1Oは従業員10人未満の少数企業向けに、従来のオフィスでは整えられないような最新設備やサービスを提供するシェアオフィス。スモールビジネスの成長を支援する環境を整えたことで小規模企業だけでなく、大~中規模企業における新規プロジェクト拠点や働き方改革の流れを踏まえた分室、増加する分散拠点需要にも対応。同じく6月時点で8拠点を開設、23年度までに15拠点の開設を予定する。
業務提携の具体的な内容は、H1TやH1O等の野村不動産が展開するオフィスブランドにおけるAkerunの導入促進に加え、シェアオフィス等における現在と今後のニーズに対応するための機能開発やサービス開発等での協業も推進する。更に協業を通じて、あらゆる空間でAkerunを基盤としたテクノロジーやデータを活用し、不動産領域におけるDX化の推進も図る計画だ。その他のオフィスブランドや住宅等でのスマートロックを軸としたDXの様子が垣間見えることも、そう先のことではない様だ。
代表取締役社長の河瀬航大氏は「まず導入によって『施設の無人化』に寄与できました。入退館におけるセキュリティ性を維持したまま、無人のシェアオフィスを実現。オペレーション業務も簡潔になり、受付レスへ繋がっています。また施設側と利用者の双方で、利用状況や時間等の履歴が簡単に把握できます。利用企業の総務には利用状況も踏まえて一気通貫で請求でき、施設側には稼働状況や履歴等のデータから施設の設備拡充やワーク環境の整備・構築にバックアップが可能です」と語った。
もちろん、中小ビルオーナーや運営事業社が運営するシェアオフィス・コワーキングスペースにも同様に採用できる。オーナーと運営会社事業者向けに其々用意でき、累計で5000社以上利用するAkerunを活用すれば保有ビルそのものの付加価値にも繋がる。近隣のオフィスビルに負けない魅力形成として、Akerun採用は妙案では。