不動産トピックス
クローズアップ 不動産投資編
2021.11.01 10:40
コロナ禍のなかでも不動産投資に対するマインドは衰えていないようだ。国内外の投資家が虎視眈々と日本の物件を見定めており、不動産価格は高止まり。投資家向けサービスにも様々な動向が出てきている。ここではそんな投資家向けサービス側の展開を紹介していく。
「神居秒算」4年半で中華圏投資家に浸透 コロナ禍・恒大集団は影響軽微で需要蓄積
日本不動産への投資に関心のある中華圏投資家に浸透する「神居秒算」。サービス開始から約4年半でスピード成長を遂げた。展開する神居秒算の趙潔社長に成長の背景と現在の投資家マインドについて聞いた。
―「神居秒算」は2017年3月にAR空間検索ツールの開発を行うNeoX(東京都渋谷区)からリリースされました。趙社長はNeoX創業から参画されていますが、この事業に携わったいきさつについて教えてください。
趙 私は中国の物流業界でキャリアをスタートさせました。上海の物流会社でセールスとしてキャリアを積み、当時社内のセールスでトップとなりました。しかし、サブプライムローン問題から生じたリーマンブラザーズの破綻、いわゆる「リーマンショック」での影響を感じるようになりました。これが2010年頃のことです。そこで11年に日本に留学。15年に日本の大手電機メーカーに入社し、上海支社で勤務。その時、上海にてNeoX創業者・現代表取締役の何書勉氏と交流を持つ機会がありました。中国人投資家向けのプラットフォームをつくりたい、という話を聞き、非常に魅力的に感じて私も参画いたしました。
―なぜ不動産分野だったのでしょうか。
趙 何氏は価格のAI査定に関心を持っていて、不動産分野で活用していくことはポイントのひとつと考えていました。この業界は情報の非対称性が著しくあります。それを変えていきたい、そういう想いがあったのだと思います。また当時中国国内でAI企業が勃興し、成功を収めていたことも事業展開の後押しをする要因になったと思います。
―今では中華圏投資家と日本不動産をつなぐプラットフォームとして、最大級だと思います。ここまで成長されるのには様々なハードルもあったと思います。伸びていったポイントがあれば教えてください。
趙 サービスをスタートして1年くらいが経過した2018年頃から「神居秒算」への知名度が格段に広がっていきました。投資家が日本不動産を買う際に訪れるポータルサイトとしての地位を確立したことから、売り物件を持つ不動産企業からの引き合いも増えていきました。中国でのマーケティング戦略がうまくいったことや、具体的な興味・関心を持つ投資家を送客してきたことで、投資家・不動産企業双方からの信頼を積み重ねてきたことも要因しています。現在では21年1月から7月までで累計約260万PV(ページビュー)、約60万UU(ユニークユーザー:サイトへの訪問者数)となっています。
―「神居秒算」は中華圏投資家に深く浸透しているのですね。一方で、他社の参入もあり得るものと思いますが、そのような点での事業を取り巻く環境はいかがですか。
趙 いくつかのサービスがあることを確認しています。しかしながら、投資家のユーザー数や物件の情報量で「神居秒算」はトップクラスであると自負しています。ユーザーは中華系の投資家で、中国、台湾、香港、シンガポールなどに広がっています。この中華系投資家に対する訴求力という強みをより伸ばしていくべく、今後も深耕していきたいですね。
―2020年にはGA technologies(東京都港区)グループ入りを果たしました。同社は日本人投資家向けに物件の提案から管理・運用まで一括サポートする不動産のサービスブランド「RENOSY」を展開されています。シナジーも期待されるところですが約1年が経過していかがでしょうか。
趙 日本の不動産業界により浸透していくことができた1年だと考えています。ただ実際のシナジー効果はこれからだと考えています。「RENOSY」にとっても、我々の知見を提供していくことでこれまで訴求できていなかった投資家層に広がりを見せることができるでしょう。しっかりと連携を強めていきたいと感じています。
―最後に中華圏投資家の日本不動産投資熱はいかがでしょうか。世界的なコロナ禍や、最近では中国不動産大手の恒大集団の社債に関する報道がなされています。これらのトピックが投資家に与える影響としてはどのように見ていらっしゃいますか。
趙 まずコロナ禍については、確かに移動が制限される中で、日本不動産への投資も縮小傾向にあるのは事実です。その一方で、当社調査では移動制限が解除されれば9割以上の投資家が「物件を見に行く」と答えていて、3割弱の投資家は「貯蓄5割以上を日本不動産へ投資することを検討している」としています。この結果を受けて、日本国内不動産仲介会社向けの新料金プランの提供も開始しはじめました。コロナ禍で需要が蓄積されている状況なので、コロナ後はそのエネルギーが放出される、と考えています。
また恒大集団のトピックスに関しては、様々な見方がなされていますが、私は1つの会社の社債危機であり、それ以上でもそれ以下でもない、という見方です。経済ならびに投資家のマインドに一定の影響が出る可能性もありますが、「リーマンショック」と同様の事態になるとは考えていません。中長期的に見れば、中華圏投資家の日本不動産投資という点でほとんど影響はないと見ています。
オーベラスジャパン 電力事業をENCHANGEに売却 「the REMS」は新会社設立、不動産事業注力へ
オーベラス・ジャパン(東京都江東区)は、ENECHANGE(東京都千代田区)と株式譲渡契約を締結し、全発行済株式を譲渡する。譲渡実行日は来月1日を予定している。
同社は15年の創業以来、デベロッパー、Jリート、不動産ファンド向けに電力会社切替バリューアップコンサルを提供。実績は約1000社・3000物件超に上る。
今回、株式譲渡を行うENECHANGE社は同業にあたる。オーベラス社の顧客層が保有する中規模・大規模不動産はESG投資の関係からもエネルギーは課題となっている。ENECHANGE社とのシナジーによって、不動産・エネルギー両方の専門性を兼ね備えたサービス提供が可能になるという。またオーベラス社が行ってきた不動産事業についてはthe REMS(東京江東区)へ移管する。
the REMSとENCHANGEは別途パートナー契約を締結し、継続して不動産業界における電力会社切替コンサルにおいて、連携していく。
不動産投資サービス「INVASE」展開 新築区分用マンション掲載開始
オンライン不動産投資サービス「INVASE」を運営するMFS(東京都千代田区)は投資用不動産を扱うグローバル・リンク・マネジメント(GLM、東京都渋谷区)と提携し、新築区分投資用マンションの掲載を先月21日よりスタートした。開始時は4棟掲載している。
「INVASE」は18年10月からサービスを開始。投資物件を探す前にローンの借り入れ可能額の算出や、投資物件の紹介を受けることができるオンラインサービスとなっている。またローンの借り換えサポートや物件売却の提案なども行っている。今回、GLMと提携したことで投資を考えている利用者に対して、希望条件に合う物件のスムーズな選定などにつなげていく。