不動産トピックス
クローズアップ 不動産売買テック編
2021.12.13 14:06
不動産テック領域のなかでも不動産売買に関するサービスは数が多い。そのなかで、ポイントとなってくるのはサービスを開発する企業に不動産に対しての知見がしっかりとあるかどうか。ポイントを押さえたサービスが待たれている。
不動産投資事業生かしたテックサービス 「プロマトComps」展開 売買の業務効率化目指す プロから個人投資家までの幅広いニーズをカバー
数ある不動産テックサービスのなかでも、事業用物件に関わるサービスは数が限られる。背景は売買価格や賃料などの情報が限られていることだ。技術があっても情報がなければ売り出すのは困難だ。不動産テック事業を展開するGRIT Tech(東京都港区)は、親会社のグリットパートナーズ(東京都港区)の不動産投資事業の実績を生かして開発を進めてきた。
GRIT Techは11月1日に不動産売買事例の迅速な取得が行える「プロマトComps」β版の提供を開始した。「プロマトComps」は全Jリートの開示情報に加えて、非公開の売買情報や賃貸情報なども日々追加している。サービス利用者はサービス上のマップで確認したいエリアに移動すると、売買事例や物件概要などを確認することができる。
グリットパートナーズは2018年1月に創業して以来、不動産投資事業や事業投資などを展開。「不動産テック」も事業の柱のひとつに据えていて、19年にGRIT Techを設立して本格的にシステム開発を進めてきた。代表取締役の落合Jeffrey建介氏は「グリットパートナーズ代表の三宅が不動産テックに着目したのは、実務を通じて不動産売買領域においてテクノロジーによって業務効率化できる余地が大きいと感じたからです」と話す。グリットパートナーズはこれまでに約100億円の不動産投資を実施。また累計450億円のアドバイザリー案件もこなす。これらの実績に加えて、事業投資領域では不動産関連事業を展開する企業のM&Aを行う。これらが「プロマトComps」が取り扱う不動産情報の収集に寄与している。
サービス展開後の反響も多い。「もともとお付き合いのある事業者はもちろん、大手から地場までの仲介会社や管理会社との連携も進めています。こういったネットワークのなかで、『プロマトComps』をご紹介して導入に至るケースが出てきています」(落合氏)。
「プロマトComps」は不動産売買工程のなかでは、検討案件に関連する売買、賃貸事例を調査する「事例取得」の部分に当たる。それを使いやすく、一目で検索できるようにした。今後は物件価格やキャッシュフローの査定を手軽に実施できる機能や、売買事例以外に参考とする指標や情報を発信するなどのメディア機能を展開していくことも目指す。これらの様々な機能を連携させて、不動産売買のプラットフォーム「プロマト」を形成していくのが目標となる。
また他の不動産テック事業の展開も検討する。「不動産投資に関連するサービスには関心を持って研究しています。例えば、クラウドファンディングです。まだこれからですが、中長期的には検討していきたいと考えています」(落合氏)。
業務効率化やコスト削減、付加価値の創造といったニーズが不動産テックへの期待につながっている。GRIT Techは「プロマトComps」を皮切りに、不動産売買分野に特化して、期待に応えていく。
AI駆使した物件ウェブアプリ開発 価格査定からライフプランに応じたレコメンドも
ESTERAS(東京都新宿区)は不動産物件情報のビッグデータをベースにAI価格算定サービスや利用者のライフプランから最適な物件をレコメンドするウェブアプリ「LIMONY」の展開を始めた。
「LIMONY」は3つの機能がある。物件レコメンド機能では利用者が自身のライフプランを入力することで、5物件ずつレコメンド(おすすめ)される。「LIMONY」で集客を図る不動産事業者にとっても問い合わせ数の増加などが期待されるとともに、ポータルサイトにありがちな「物件が埋もれる」という懸念が少ない。
またAIによる価格算定とマッチングも行う。売却を検討するユーザーを対象にしていて、13種類のAIモデルが物件の最適価格を算出、物件を登録すると不動産業者から買取価格が提示される。業者側は登録されている物件を検索し、自社の計画とマッチするものに対して直接DMすることが可能だ。
チャット機能も設けた。これまで不動産会社への問い合わせではメールアドレスや電話番号の入力が必須であったが、チャット機能でその手間をなくした。また不動産会社側もスムーズにやり取りできる。