不動産トピックス

クローズアップ ワークスペース編

2022.02.07 10:32

 コロナ禍によってワークスタイルが大きく変化する中で、働く場所にも変化が生じている。三密回避やコミュニケーション活性。これらを実現するひとつの手段はDXに行き着く。本特集ではワークスペースの最新動向に焦点を当てた。

2022年のオフィストレンドを発表 「働く人全体」「パーパス」がキーワードに
 フロンティアコンサルティング(東京都千代田区)は先月5日より「大手町ビルヂング」1階オフィス「OTEMACHI KORTO」での業務をスタートした。31日には「オフィストレンド2022」記者発表会を実施。報道陣に新オフィスを公開した。
 企業やワーカーのオフィスに対するニーズは2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、大きく変化を見せた。フロンティアコンサルティングではコロナ禍当初より「新常態(ニューノーマル)のワークプレイスに必要な4つの議論」の提言などを行ってきた。20年6月に発表された提言のなかでは、「コミュニケーションの再定義」、「より専門性の高い場づくり」、「健全な活動のための環境」、「外部の組織や人材との関係性構築」などについて問題提起。現在多くの企業で検討が続けられている「オフィスのあり方」のテーマにいち早く着手してきた。
 同社執行役員ワークデザイン研究開発部兼設計デザイン部部長の稲田晋司氏は現在を「After COVID―19」期と捉える。同社の定義によれば、この期間は「Covid―19の感染が落ち着き、コロナ禍で得た経験を重視しながら今後のワークプレイス戦略を再構築するフェーズ。テレワークの本格的な導入や長期的な安全衛生対策にむけて、大規模なオフィスプランの見直しが検討、実行される」としている。
 このことはワーカーの意識からも見えてくる。20年12月に実施した社会人300名、学生200名の計500名を対象にウェブアンケート調査を行った。調査のタイトルは「働き方の広がりによる価値観の変化に関する調査」。「新型コロナウイルスの流行はこれからの働き方について考えるきっかけになりましたか」という問いに、74%の人が「はい」と回答した。このことは企業の採用戦略にも影響しそうだ。就職や転職に際して自分の生活にあった働き方が実現できるかどうかを重視する「働き方」を企業選択の上で重視する、という回答が若い世代で増加。特に学生は社会人の2倍になったという。
 これらから稲田氏は2022年のトレンドとして「働き方の起点は働く人々へ」と「Purpose Driven Workplace」の2つを挙げる。前者は働く人々が求める働き方を提供する時代への転換を意味するものだ。企業がワーカーの成長に対する欲求を支援する環境と機会を提供していくことで、採用活動などを順調に進めていくことができるようになる。そして後者は、企業がパーパス(存在意義)を起点として働く環境を整えて、パーパスへの共感を生み、企業と協働して自己実現欲求を叶える人々へ機会を提供していく場であることだ。
 そしてこれらのトレンドを織り込んで、同社が先駆けて構築したオフィスが「OTEMACHI KORTO」だ。

新オフィス公開 「コミュニティ」を重視
 「OTEMACHI KORTO」ではリアル、オンラインなど様々なコミュニケーション、コミュニティ活動が生まれるワークプレイスとなっている。たとえばオフィス受付のある「ソーシャルゾーン」ではセミパブリックな空間を構築。壁面アートとして廃プラスチックを活用した「プレシャスプラスチックアート」も設置。環境問題に取り組みながら、オフィスへの訪問者との交流にも活用する。
 ソーシャルゾーンと、執務空間である「プロジェクトゾーン」にまたがる形で「Node」を設置。ファシリティ担当を配置し、日常的なワークプレイス運営のほか、社内外のコミュニケーションハブとして機能させていく。
 また国内外に支店を持つ同社ならではのコミュニティ活動を支える機器も設置する。同社では20年より離れた2拠点を等身大で繋ぎ、境界のない世界を実現する「tonari」を設置。「tonari」は同社が2019年3月に開設した働き方の開発支援プラットフォーム「WORK MOCK」の取り組みの中で開発支援を行う、対面で会っているかのようなソリューションとして注目を集めている映像システムだ。
 働く場所も多彩だ。WEBミーティング用の個室ブースから、個人がパーパスを語り企業のパーパスとすり合わせるダイアローグスペースなどを設置した。
 同社ではこのようなオフィスをつくることで、人と人とのつながりで得られる便益を意味する「ソーシャルキャピタル」の創出と、自己実現に向けて肉体的にも精神的にも社会的にも満たされた状態を「ウェルビーイング」の実現を目指している。今夏にはオフィス移転後の効果を全社員対象に調査し、その結果を公表していく。
 コロナ禍から2年が経とうとしている。働き方やオフィスのあり方について様々な検討が進んでいる。今回のフロンティアコンサルティングの実践は、アフターコロナ、そしてコロナ収束後のニューノーマルに向けてのひとつのモデルとなっていきそうだ。

バカン 「Keeple」をNTT東日本のオフィスに導入
 バカン(東京都千代田区)は東日本電信電話(NTT東日本、東京都新宿区)のオフィスに対して、オフィス向けコミュニケ―ション促進サービス「Keeple」の提供を開始した。本社オフィスの執務スペース約300席にサービスを展開し、テレワークとオフィス勤務のハイブリット勤務にニーズに対応した新しいオフィス形態の提案や、コミュニケーション誘発に向けた機能のブラッシュアップを行っていく。
 コロナ禍によって働き方やワークプレイスが変化を続けるなかで、それに対応することを目的にNTT東日本と共同でオフィス向けコミュニケーションサービスの検討を開始した。今回の取り組みはその一環となる。「Keeple」はオフィスの座席に設置された専用タブレットと専用ウェブサービスを活用することで、手軽に座席の予約やオフィス内での社員の現在位置を検索できるサービスとなっている。今後、両社で連携してサービスのブラッシュアップ等を図っていく。




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