不動産トピックス

今週の一冊

2022.04.11 10:22

近代建築の祖の論考は

装飾と犯罪 建築・文化論集
著者:アドルフ・ロース
発行日:2021年12月10日
発行所:筑摩書房
価格:1300円(税別)

 近代建築の先駆者の1人である著者は1870年、現チェコ生まれ。ウイーンとパリを中心に活動。装飾を排した建築は当時のウィーンで物議を醸したという。「装飾は犯罪である」という言葉を残したロースの重要な論考を集めた本書は実に深い。「デラックスな馬車について」の章では「装飾なんかついてないからよい」という馬車大工の方が工芸家や建築家より程度が高い人種だといい、こう続く。「美を装飾とは無関係とすること、これこそ全人類が目指す目標」。馬車の専門学校があるとその教育で「装飾がある馬車が美しい」と押し付けられる。また「我々は労働の量をより重んじる時代に生きている」という。労働量は計算が容易でものの価値を簡単に決められる。決められた価値のほかにはモノは何の意味も持たないという深い論だ。「ポチョムキンの都市」章の冒頭にハッとする。急拵えの見せかけの村を意味するポチョムキン村は「ロシアだからこそ可能であったのだ!」
 26の章はすべて建築の論考というよりは彼の哲学、芸術論、社会思想だ。人間の歴史を「2歳の時はパブア人、4才は古代ゲルマン人、6才ではソクラテス、8才はヴォルテール」。さて意味するところは何か。じっくり読み込みたい一冊。




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