不動産トピックス

今週の一冊

2022.05.23 13:30

デジタル都市で何が起こっているか

上海 特派員が見た「デジタル都市」の最前線
著者:工藤 哲
発行日:2022年2月15日
発行所:平凡社
価格:920円(税別)

 日本に最も近い中国の大都市・上海。複雑な日中関係のなか、政治の北京とはまた違う魅惑の上海は、記者を悩ませる「魔都」だという。
 北京に5年間、その後2018年から2020年秋まで上海に駐在していた著者が見聞きしたことを振り返る本書はハードな濃さだ。第1章「デジタル都市の光と影」ではあらゆる場所に監視カメラのある圧迫、スマホにあらゆる行動を把握される「暗黙の圧力」、そして古くて新しい魔力「青春代」を求められる駐在員のエピソードを淡々と伝える。第2章「草の根交流の最前線」では上海で感じる日本の存在感が語られる。中国メディアが語る日本はときに手厳しい。なぜ日本には象徴的なIT企業がないのか、その理由には日本に漂う閉塞感も分析されている。「憧れハウス」、「オンライン裁判」、「寝そべり族」等々、興味深い上海の景色も丁寧に解説。「新型コロナに揺れる中国」の章、そして最終章の「上海総領事インタビュー」は深く読み込みたい。最後に著者は語る。「日本の地方で暮らし始めて不安になることもある」、日本のサービスが安すぎる。人々は正当な対価を得ているのかと。上海を知り、日本の歪みに直面する一冊と言えよう。




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