不動産トピックス
【今週号の最終面特集】オフィス業界にも影響あり 宅配収納サービス
2022.05.30 14:05
事業提携結ぶ不動産事業者増加 荷物の収納・出入代行・宅配収納サービス
住居向けのサービスではあるが、宅配型の収納サービスが伸びている。数年前から各社提供しており、コロナ禍での在宅勤務が広まったことで急速に普及が加速。マンションやアパート、社宅を保有・管理する不動産事業者でも提携を結ぶなど、業界では着実に定着しつつある。
1箱月額275円~保管料+取出の送料のみ
サマリー(東京都渋谷区)が運営する宅配収納サービス「サマリーポケット」が興味深い。荷物の収納・出し入れをユーザーに代わって行う利便性から、利用者や事業提携を結ぶ不動産事業者が増えている。
サマリーポケットは専用ボックスに預けたい荷物やアイテムを詰めて送ると、空調・セキュリティが徹底管理された環境で保管を行う宅配収納サービス。荷主(ユーザー)自らが足を運ぶ従来のトランクルームやストレージと異なり、宅配便を活用することで居住地域に関係なく荷物を集荷し収納する。ボックス1箱月額275円~605円と割安。取り出しは収納したアイテム1点ごとにも対応する。荷物を倉庫へ収納する前にスタッフが、1点ごとにアイテムを撮影しリスト化することからできる仕組み。預けたアイテムを確認したい時、取り出したい時に、自宅や遠方に居ながらスマートフォン操作一つで把握ができる。アイテムを1点ずつ写真撮影し、衣類のクリーニング等のオプションサービスが利用できるのは「スタンダードプラン」。一方写真撮影なしで箱ごと保管するだけのシンプルなサービスが「エコノミープラン」。バーコード付きの書籍を点数制限なしで保管できる「ブックスプラン」がある。
サマリーポケットの使い方はシンプル。最初にサマリーポケットへ登録し、収納用のボックスを取り寄せる。ボックスが届いたら、荷物を詰めてPCやスマートフォンから集荷を手配。後は集荷に来た宅配スタッフへ荷物を渡すだけ。ボックスの取り寄せ費用や倉庫までの配送費用は発生せず、発生する費用は「月額での荷物の保管料+荷物取り出し時の送料」だけである。
法人営業マネージャーの白石勘太郎氏は「日時指定での取り出しができ、関東エリアであれば最短で取り出し依頼の翌日にはご自宅へ配送が可能です。ホテルや会社でも受け取ることができます。こうした利便性の高さから主に都市部で暮らす20~30代の利用が多く、男性ユーザーよりも女性ユーザーの割合が若干高めです。安心して荷物を預けられる環境が好まれていることも背景にあるでしょう」と語った。
都市部に立地の住居 収納スペースが不足
ここ数年はマンションの管理会社やデベロッパーとの連携も増えている。背景には都市部に立地するマンションやアパート、サービスアパートメントであると収納スペースが不足しがちであること。それを宅配収納サービスが補填してくれる。またシーズン物やレジャーアイテムは大きいアイテムが多く、使い時も限られる。この様な課題に着目し、今年3月からは大型荷物に適した大型アイテムプランも開始された。
白石氏は「大型アイテムプランは、スキー・スノーボードといったシーズン物から、スーツケースやゴルフバッグといった場所を取るレジャーアイテムにまで対応します。規定重量は30kg以内で、全国でご利用いただけます(※一部地域を除く)。大型アイテムに限らず宅配収納サービスの需要はまだ伸び続けるでしょう。アパートやマンションを抱える不動産オーナーと連携させていただき、物件の魅力付けに是非当社のサービスをご活用いただければと考えています」とした。
ユーザーに代わって宅配業者が集荷・収納
阪急阪神東宝グループの阪急阪神エステート・サービス(大阪市福島区)は、宅配型トランクルームサービス「risoco」を展開している。
risocoは、本や衣類、雑貨等の荷物をユーザーに代わって宅配業者が集荷し、自社所有の倉庫へ収納・保管するサービス。手順はユーザーがrisocoのサイトで会員登録した後に、専用の収納ボックスを購入。ボックスへ荷物を詰めて、後はサイト上から集荷を依頼するだけ。宅配業者がボックスを受け取り、倉庫へ届ける。逆に、荷物を取り出す際は同社営業日の12時までに依頼すれば、最短で翌日には荷物がユーザーの元に到着する。預け入れに必要な費用はボックス購入費(レギュラーサイズであれば275円)と月額保管料330円だけ。また書籍専用のプラン「risocoブックス」もあり、こちらも1箱で月額保管料330円。書籍を自宅に多く持つ人や、普段使う機会の少ないモノ・季節モノの収納に困っている人には最適なサービスである。
アーカイブ事業部の富岡久能氏は「自社倉庫・自社社員で荷物を管理しています。1箱ずつ丁寧にお預かりし、2段重ね等の積み置きは行っていません。安心と安全を重視して保管させていただいています。またrisocoブックスであれば、1冊ずつ書籍を登録しますので、1冊ずつの取り出しが可能です。沢山書籍を保管できる良さから、多くのお客様にご利用いただいています」と語った。
他マンションとの差別化 付加価値として活用
実際、長期にわたって利用するユーザーが多いことも特長だ。同事業を親会社から譲り受けて既に5年が経ち、親会社時代からの運営期間も含めると同サービスは7年経過。当初から使用するユーザーもおり、継続して利用に繋がっていることはサービスの利便性や安心・安全が評価されてのことであろう。
また不動産分譲事業社との提携も可能だ。特に収納スペースが限定されている・広く確保できない昨今のマンション事情において、宅配型トランクルームサービスが解決策と注目されている。新築マンションであっても収納スペースに課題がある、他のマンションとの差別化が難しい場合に付加価値として活用されている。実際、同社でも親会社の阪急阪神不動産が開発したマンション、他の不動産事業社とのタイアップも行っている。レンタルオフィスやシェアオフィスが、会員向けの収納スペース確保に提携することも妙案であろう。
富岡氏は「断捨離が難しくても、普段使用しないモノをrisocoへ預けるだけで、空きスペースが創出でき、限られた空間を有効に活用できます。不動産の有効活用に繋がるサービスなので、不動産事業社は積極的に採用することをお勧めします」と語った。
東急住宅マネジメント 社宅入居者へ宅配収納サービス提供
東急住宅リース(東京都新宿区)のグループ会社である東急社宅マネジメント(東京都新宿区)は今年1月、サマリーと業務提携契約を締結。東急社宅マネジメントが社宅管理代行業務を受託している企業の社宅入居者を対象に、サマリーポケットの提供を開始した。東急社宅マネジメントの社宅管理代行事業は、企業における従業員の異動や入社に伴う賃貸住宅への入退去手配等を企業の社宅管理担当者(福利厚生担当者等)に代わり行っているサービス。社宅入居者は単身世帯・ファミリー世帯共に転勤が多いことから、現状荷物の管理等に課題を抱えている。同社では賃貸住宅の限られた居住空間の有効利用を促すことが、更なる福利厚生充実のサポートになると認識。スマホ一つで荷物の預け入れから取り出しまでの操作が可能なサマリーポケットに注目し採用。社宅入居者は専用ウェブサイトから申し込むことで同サービスを優待価格で利用できる。