不動産トピックス
クローズアップ ブロックチェーン活用編
2022.07.04 10:45
ブロックチェーン活用の取り組みが進んでいる。以前は賃貸住宅入居者の情報を、許可を得られた場合に限ってブロックチェーン上に記録。それを共有する金融機関などの間では本人確認を簡素化する、という取り組みがなされてきた。現在はさらに広がりを見せ、投資やシェアハウスにおける運営の仕組みとしても活用。NFTなどの最新技術などを用いるケースもある。こういった取り組みが広がっていくことで、不動産業界でブロックチェーンの実用化はさらなる深耕を見せていきそうだ。
DAO型シェアハウス展開へ 入居者の自立運営を可能に
巻組(宮城県石巻市)とガイアックス(東京都千代田区)は先月28日、ブロックチェーンを活用したDAO型シェアハウスの展開を発表した。DAOは自律型分散組織の意。第1号物件は神楽坂に9月上旬にオープンする。20代・30代を中心に住まいへの価値観が多様化している。入居者自身が暮らしやすい環境にアップデートし続けられるよう、投票による意思決定を可能にしたシェアハウスを目指す。
巻組は2014年の創業以来展開してきた空き家活用ビジネスのノウハウを生かし、DAO型シェアハウスの定着を目指す。ガイアックスはDAOコンサルティングサービスを展開しており、専門的な知見をもとにアドバイスを行う。
9月にオープンする物件は「Roopt神楽坂 DAO」。木造2階建ての物件2棟で、築年は1958年と1966年。両棟とも2020年にリノベーションを実施した。10のベッドを用意。コワーキングも併設する。
入居希望者はNFT(3万円)を購入する。NFTはブロックチェーンを活用して権利や所有のデジタル証明書。改ざんが困難であることやデジタルコンテンツの所有証明として近年注目を集める。
「Roopt神楽坂 DAO」は1NFTで1カ月間の居住、あるいは7泊8日のワーケーションの権利が付与されている。入居者はシェアハウスでの掃除や運用の業務委託、資産購入などについて1票の投票権を持つ。オーナーや管理者を設定せず、入居者同士が自律的に運営する仕組みを目指す。メンバーは最大で240名。
巻組は2014年の創業以来、空き家活用ビジネスを展開してきた。今回始めるDAO型シェアハウスは中長期で200棟展開していく目標を据える。入居者間での合意形成ができるシェアハウスの確立を目指していく。
巻組代表取締役の渡辺享子氏は今回の経緯について「ニーズが多様化する中で若い世代が自分たちで作っていける住宅ができないかと考えて、昨年ガイアックスと資本業務提携を結び、Rooptの開発を行ってきた」と話し、「DAO型シェアハウスはより多くの人が住まいづくりに関与できるものとして今回の発表となりました」とした。
三井物産デジタル・アセットマネジメント デジタル証券ファンド第3号組成
三井物産デジタル・アセットマネジメント(東京都中央区)は第3号となるデジタル証券公募ファンド「不動産のデジタル証券~ALTERNAレジデンス新宿中落合・経堂・門前仲町~譲渡制限付」の資金調達が完了し、運用を開始した。レジデンスを裏付資産としたデジタル証券ファンドは同社初。
不動産のデジタル証券とは小口化した不動産持分を裏付けした商品のこと。この証券の保有者情報はブロックチェーン上に記入し、証券の発行・譲渡・償還などが発生した場合にはブロックチェーン上の情報を書き換えることで権利の移転が実現される。
「預金から投資へ」という政策が打たれるなかで、不動産・インフラを始めとしたオルタナティブ資産の証券化商品の投資環境が一部の限られた資産に対して限られた投資家のみがアクセスできているのが現状となっている。同社はデジタル証券ファンドの取り組みを通じて、こういった資産へのアクセスとなる個人投資家向けの商品開発を進めている。
今後については、デジタル証券ファンドのためのパイプライン案件が約1000億円となっており、順次ファンドを組成していく予定。25年3月期5000億円以上の運用残高を目指す。