不動産トピックス

【今週号の最終面特集】人口減少・人手不足の時代に 変わり始めたビル管理業界

2022.10.03 10:46

更なる効率化求め実証実験が加速 ロボットにもやさしい環境の構築へ
IoT社会の拡大でセンサー数は45兆個 広範囲・安定的な電力供給に注目集まる
 ビルを縁の下から支える管理・メンテナンス会社。その役割は非常に大きいものの、担い手不足という課題に直面している企業は数多く存在する。安全安心な環境を提供し続けるために、管理・メンテナンスの業務はどのように進化しようとしているか。最新事情を調査した。

清掃や警備等あらゆる場面でロボットの存在は不可欠に
 東急不動産(東京都渋谷区)、東急コミュニティー(東京都世田谷区)、ソフトバンク(東京都港区)、日建設計(東京都千代田区)は、4社共同で施設内におけるロボットのスムーズな運行を可能にする「ロボットフレンドリー」な環境の構築に向けた調査および研究開発をスタートさせた。
 この取り組みは東急不動産が港区海岸で管理・運営する「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」を対象に、ロボットフレンドリーのレベル指標を用いた物理環境の評価を行い、その上で商業フロアやオフィス共用部で清掃、警備、配送ロボットを使用した実証を行うというもの。施設内におけるロボットの運用上の課題を整地して、施設側やロボット側だけではなく人側の対応も含めて提案・分析することで、それぞれの視点から課題解決に向けた選択肢を示し、施設の状況に応じて合理的にロボットフレンドリー化を実現する手法の開発を目指す。今回の研究開発事業は、経済産業省による補助事業「令和4年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択されており、実証期間は来年3月までを予定している。

設備機器の自動制御に必要なワイヤレス給電システム
 米国・スタンフォード大学発のスタートアップ企業・エイターリンク(東京都千代田区)は、配線のないデジタル世界の実現を目指し、ワイヤレス給電技術の産業用途への活用を推進している。同社が開発した空間伝送型ワイヤレス給電システム「AirPlug」の商品化に向け様々な実証実験を実施。この「AirPlug」はマイクロ波を活用したワイヤレス給電システムで、17m先への長距離給電を実現し、双方向のデータ通信が可能である。また、あらゆる角度に給電が可能といった特徴を有している。
 この技術はビル管理の現場での活用が期待されており、静岡市葵区に昨年10月末に竣工した「竹中工務店 静岡営業所」では、世界で初めてとなる空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムを導入。オフィスフロアの椅子の座面裏側には温度や湿度を測るセンサーが設置されているが、このセンサーへの給電はエイターリンクの「AirPlug」の技術が活用されている。同社ではワイヤレス給電を活用した次世代ビル管理システムとして、空調・照明の制御や空気環境、セキュリティ、座席の使用状況による人の動きの見える化など、オフィスビルの管理面における様々なセンサーと連動することにより、安定した給電環境を構築しながら設備の最適化や無駄のない自動制御の実現を目指すとしている。
 同社代表取締役COOの岩佐凌氏は「世界的にIoTデバイスが爆発的な増加が進む中、IoTセンサー数は45兆個にもなるといわれています。こうしたセンサーの配線やバッテリー交換の実現性を考えた場合、ワイヤレス給電技術は必須となるでしょう。また、デバイスの消費電力の低下により、ワイヤレスで供給できる電力で駆動できるものが増えつつあるというのが現状です。こうした背景もあって省令改正(電波法施行規則等の一部を改正する省令)が行われ、空間伝送型ワイヤレス電力伝送機器が使用できる環境が整ってきています」と述べる。配線のない空間で各種設備の最適制御を自動で行うことが当たり前になる時代は、もうすぐ目の前まできている。

先進技術活用の一方で求められる人材開発
 ビルの管理・メンテナンスは労働集約型の産業とされ、人の手による業務の遂行、サービス品質の向上がこれまで図られてきた。一方で前述のようの最新技術の活用によって業務効率化が著しく進んでいるという側面もある。しかしながら顧客との対面折衝や熟練の技術が必要な場面など、人の手がどうしても必要となるシチュエーションは必ず存在する。人手不足が社会的な課題となっている今、特にビル管理・メンテナンスの現場では人材の確保は大きな課題であり、各社は今ある人材をいかに育成するかに注力している。社内研修やセミナーはを年間1000件以上開催しているPB Lab.の代表幹事・亀田耕司氏は「多種多様な企業や団体の研修・セミナーを請け負っており、建設や建物管理の分野の企業にも数多くの実績があります」と話す。先進技術の積極的な活用と事業活動の基盤となる人材開発が肝要といえそうだ。


<人材育成サポート>
プロによる社内研修で企業の課題を解決
PB Lab. 代表理事 亀田耕司氏
 生保会社出身の亀田耕司氏が代表理事を務めるPB Lab.(ピービーラボ、東京都品川区)では、企業・団体が抱えている問題や課題を解決に導く社員向け研修の講師を派遣。年間1000件を越える研修やセミナーを開催し、講師は委託を含め30名を超える。
 同団体ではこれまで大手上場企業や地方公共団体、建物管理や建設など、様々な企業・団体の課題解決型研修を実施しており、研修ジャンルは新入社員向けから管理職向けまで多種多様で、ハラスメントやアンガーマネジメント、働き方改革など、企業・団体によって異なる課題に応じたテーマ設定で講師を中心とした全員参加型の研修・セミナーを展開している。
 代表理事の亀田耕司氏は前職時代から社内の研修・セミナーを数多く手掛けてきた実績を持つ。
 「研修メニューではケーススタディを必ず用いており、一方的に講師の話を聞くのではなくディスカッション形式で課題解決への糸口を探るため、参加者は臨場感を持って受講することができます」(亀田氏)
 プロの講師による研修・セミナーは社員教育だけでなく、社内の風土改革にも大きく貢献する。同団体では受講者目線の講義を行い、受講者満足度とリピート率は97%を誇る。




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