不動産トピックス

【今週号の最終面特集】ビル管理・ビルメンテナンスで広がるAI・クラウド活用の動き

2022.10.17 10:38

クラウドの賃貸管理サービス 月額5万円からで経済的にメリット
AIでメーター点検を簡略化 日々の検針作業約8秒で完了
 業務の効率化・簡略化や作業負担の改善が急務と言われているビル管理・メンテナンス業界。しかし、未だ何に取り組めば良いか模索中の企業も多いだろう。手っ取り早く始めやすいのは検針作業の簡略化。スマートフォンに、検針サポートのアプリケーションをインストールするだけ。負担改善に繋がれば、人材確保にも貢献するのでは。

AIが読み取りWeb台帳へ自動連携
 GMOグループのGMOグローバルサイン・ホールディングス(東京都渋谷区)は、2019年1月からAIでメーター(計器)点検を簡略化できる「hakaru.ai byGMO(以下、ハカル エーアイ)」を提供している。
 ハカル エーアイは、高機能AIによる検針サポート特化のアプリケーション。様々なタイプのメーターを、スマートフォンにインストールしたアプリケーション「ハカル エーアイ」を使用し撮影するだけで、撮影画像からAIが画像認識した数値を読み取り、Web台帳機能へ自動連携する。これまで目視・手書きで台帳へ記載、かつPCにも入力といった手順は1メーターあたり数秒で完了。手書きでの1メーターの検針作業は平均約2分30秒(同社調べ)かかるところ、同サービスでは約8秒で完了する。月ごとの使用量計算や対前年比較などの差分も計算でき、詳細をまとめた情報の一元管理も容易だ。
 事業責任者の末舛仁史氏は「昨年から利用企業数は増え、1・5倍になりました。検針特化のシンプルな機能と使い方が好評で、正確性も向上。利用者の年齢に捉われず、誤検針や労働作業の簡略化・改善も実現しました。昨今はメーターの誤認やミスがあるだけで、ビルメンテナンス会社の信用が問われます。誤検針、誤請求事故を無くしたい。他社より選ばれたいビルメンテナンス会社には必須でしょう」と近況も交えて強調する。

築古の中小物件に最適 既存システムと連動可能
 未だ検針業務が手作業な企業は多い。デジカメや筆記用具は必須で、作業時には荷物が多くなる。ハカル エーアイであれば、スタッフの持ち運び負担はスマートフォン1台で解決。この利便性を好み、導入するビル管理・メンテナンス会社は増加傾向とのこと。また新築ビルでは自動での解析・連動システムを導入した物件が増えてきた。一方築年数の経過した既存ビルは、そうでない。中長期的に運用(維持・管理)するテナントビルを思えば、ビル管理・メンテナンス会社がAIによる検針アプリケーションでデジタル化を行うことが必然となる。
 末舛氏は「ビル管理・メンテナンス会社の中には、既に検針管理システムを導入しているケースがあります。我々としては既存のシステムに慣れた企業へ無理に新しいシステムへ移行し、慣れるように勧めるのでなく、既存のシステムでも活用できる仕組み作りで、検針を改善することが重要と考えます。当社はその様な要望にもAPI連携で対応できます。様々な検針現場があると聞きますので、ハカル エーアイでの業務改善を試してみてください」と語った。
 同社は10月26日~28日の3日間、東京ビッグサイトで開催される「ビルメンヒューマンフェア2022」に出展する。検針業務の効率化に興味のある企業は、足を運んでみると有益な情報が聞けると思われる。

管理物件の現状把握などノンコア業務全て外注
 不動産オーナー向けのクラウド経営管理サービス「大家のヤモリ」と管理会社向けの賃貸管理サービス「管理会社のヤモリ」を展開しているヤモリ(東京都港区)。大手不動産管理会社よりも中小規模、特に小規模な街の不動産管理会社向けに提供している。
 不動産オーナー向けの「大家のヤモリ」は、収益不動産をクラウドで一元管理できる無料の収支管理ソフト。複数棟かつ様々な地域に点在する保有物件の情報を1カ所に集約・可視化。更に物件全体の分析や管理の円滑さも実現。ターゲットは個人投資家の不動産オーナーや中小規模の不動産事業社。収益不動産を複数棟持ち管理していること、またアナログな業務やペーパーレスの進んでいない企業に可視化・省人化で好まれている。保有物件の収支状況や毎月の収支計算等を名義・物件ごとに、空室率・家賃の滞納率等も含めて可視化。それも1棟ごと1ルームごとに分析が可能。書類はクラウドでまとめて一括管理。社内や管理会社とも共有・連携可能だ。
 この管理会社向けが「管理会社のヤモリ」。管理物件の現状把握、入居者管理、入金管理・確認、月次の収支明細作成などのノンコア業務を全て外注できる。初期導入のデータ入力・移行作業はヤモリのスタッフが代行。オーナーとのコミュニケーションを1カ所で完結できるオーナーチャットや収支分析機能も用意。同時に書類管理や送付作業、情報共有等も効率化。物件ごとの資料作成や改修・メンテナンス等の提案にも利用でき、きめ細やかなサービス提供にも繋がる。

オーナーから信頼獲得 手間なく直ぐに導入
 導入企業に、札幌市白石区のスリーアールがいる。売買を中心に、賃貸仲介や賃貸管理業務を展開する総合不動産会社。賃貸管理戸数は400戸以上で、年々戸数は増加傾向とのこと。札幌市及び近郊エリアの物件を対象としている。そんな同社が「管理会社のヤモリ」を使用することとなった経緯は、毎月発生する膨大な事務作業。毎月の家賃入金チェックや月次明細書の作成、賃貸契約管理、物件情報管理など毎月やることは変わらないが、事務業務は多岐にわたる。事務業務だけに人を雇用して給与を支払うことも極力避けたいとのことだが、1人で対応できる範囲も限度がある。管理戸数を増やしていきたくても現在の体制では400戸が限界との認識であった。
 代表取締役の野村龍平氏は「採用した背景には、コア業務の売買仲介と賃貸管理のコンサルティングに専念したかったからです。オーナーへ入居率アップの施策を提案することや、経費削減で物件価値の向上を目指しています。それがオーナーさんからの信頼獲得に繋がると思っています。『管理会社のヤモリ』の導入で、管理業務の効率化だけでなくオーナーにも物件収支を可視化することができて満足度向上に繋がることも魅力的でした。また圧倒的に安価で導入のハードルが低い点も決め手でした。事務スタッフを月20万円以上で新たに採用するよりも、月額5万円からアウトソーシングで経済的にメリットがあります。初期入力の手間もかからずに直ぐに導入できるので、スムーズに物件情報や入居者情報も登録することができました」と背景について語った。
 代表取締役の藤澤正太郎氏は「利用者からは『とにかく気が楽になりました』との声が寄せられました。入金確認ひとつとっても消し込み作業で、ミスが発生してしまうこともあったようです。『管理会社のヤモリ』では銀行口座の明細や保証会社の明細など、全てのフォーマットから直接データを取り込めるのでミスの心配がありません。導入以降、これまで数日かけて行っていた月末締めの業務時間を削減することに繋がります」と語った。




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