不動産トピックス
【今週号の最終面特集】付加価値創出の新たな一手
2022.10.31 10:21
施設利用者の利便性向上に寄与 確かな技術でビルの差別化に
ビルの利用者が快適に過ごす環境づくりは、テナント付けの大きな要素ともなりうる。生産性の向上や施設の利用促進など、テナント側としてもメリットが大きいためだ。今回はビル・駐車場の管理者必見、最新付加価値創出サービス・製品を追っていく。
消臭・除菌ミストシャワー展開 衣服の消臭・除菌に対応
ハル・インダストリ(静岡市駿河区)は消臭剤の製造・販売を展開している。消臭剤製造の歴史は古い。原点は、1983年に水産工場向け消臭剤の製造に遡る。特徴は、消臭成分が100%植物由来という点。安全性が高く、香りの好みに関わらず誰もが気軽に使える作りが魅力だ。
現在は広範な企業や個人まで販路を拡大。消臭剤・消臭装置を中心に製造・販売を手掛けている。2019年には消臭除菌ミストシャワー「HAL・SHOWER」を開発。衣服にミストを吹き付ける消臭・除菌装置として多くの引き合いがある。
「HAL・SHOWER」の開発経緯について企画開発室次長兼WEB事業部次長の清水優佑氏は「実は創業当初39年前に魚の加工工場の従業員の衣類に付いたニオイを消したいという希望から原型が作られており、パチンコホールなどでも使用されていたことがあります。それから20年余り経った後、取引のあったパチンコホールの事業者様からの相談がきっかけで改めてこのHAL・SHOWERが開発されました。パチンコホールは2020年4月に施行された健康増進法改正前は、店内で喫煙しながら遊技することができたこともあり、『服のニオイを消してから帰りたい』というお客様の要望が多いとのことでした。それを受けて個室型の消臭シャワーを開発、設置を進める中で、パチンコホール以外でも使えるではないかと考え、移動可能な形に改良したのが始まりです」と話す。
「HAL・SHOWER」は高さ1530mm、幅800mm、奥行き410mmの躯体に、3つの噴射ノズルを備えている。躯体のセンサーに手をかざすと数秒の間、除菌・消臭ミストを噴霧。噴霧後は乾燥用の風が吹き出し、消臭・除菌が完了するという仕組みだ。
「HAL・SHOWER」では消臭効果に加え除菌成分を含んだ液剤を使用する。
この液剤は新型コロナやインフルエンザといったエンベロープ型ウイルス(2種)の不活化証明を取得している。昨今の新型コロナ禍で除菌ミストの噴霧器への参入企業が増える中、「HAL・SHOWER」はその先駆けといえる。
消臭剤の吹付けは、噴霧量や成分量に気を付けないと人体リスクにもつながりかねないとされる。一方ハル・インダストリの除菌・消臭剤は100%植物由来の成分を使用しており、急性経口毒性試験、急性吸入毒性試験、皮膚一次刺激性試験、眼刺激性試験と4つの第三者機関での試験をクリア。安全面も折り紙付きだ。
導入実績は多数 管理の容易さも魅力
販売開始以降は「品川シーズンテラス」、「横浜ランドマークタワー」をはじめとしたオフィスビルのほか、静岡市役所やパチンコグループまで様々な施設へ導入が進んでいる。「喫煙所を利用した後、エレベーターやオフィス内にたばこのニオイを持ちこんでしまうことが多くの施設で課題となっていました。かといって施設内の喫煙所をなくすと、今度は仕事の生産性の低下も問題となってきます。喫煙所の入り口で消臭剤を24時間噴霧する施設もありましたが、大きな労力・コストがかかります。『HAL・SHOWER』には30Lの消臭除菌剤のタンクが備えてあります。タンク30Lにつき約3000回の噴霧が可能で、液剤の詰め替え作業を除けば手間はほとんどかかりません」(清水氏)。
そして11月1日からは、新製品の「HAL・SHOWER Lite」を販売開始。高さ1459mm・幅420mm・奥行320mmと、従来型の「HAL・SHOWER」よりもコンパクトになった。十分な設置スペースが取れなかったオフィスにも導入しやすいサイズだ。装置本体価格も4分の1まで削減できたのも魅力だ。
「コロナ禍で喫煙所の閉鎖が相次ぎましたが、除菌を目的に導入をされた新しいニーズもありました。今後もオフィスビルから商業施設、テーマパーク、観光施設、宿泊施設、マンションなどの住環境まで、あらゆる需要に応えていきたいと考えています」(清水氏)
『安全性』は、今や製品を選ぶうえでの大事なポイントとなっている。効果・安全性共に優れたメーカーの飛躍を見守り続けたい。
駐車場管理やスマートビル化に寄与 中国発のIoTソリューション
駐車場の管理における、DXの導入にも関心が高まる。中国に本社を置くDahua Technologyは、ビデオを中心とするIoTソリューションプロバイダーを提供している。
主力商品はカメラ、レコーダー、インターホン、ディスプレイ、ソフトウェア、交通、製造、教育、エネルギー、金融、環境保護に至るまで提供実績は幅広い。セキュリティ総合情報専門誌「a&s」が発表する「グローバル・セキュリティー・カンパニーTop50」に15年連続入選し、2021年には世界2位にランクインしている。現在は中国にとどまらずアジア太平洋、北米、ヨーロッパ、アフリカなどに56の海外子会社を持ち、世界のあらゆる国・地域まで領域を拡大。昨今は日本法人のDahuaTechnology Japan(東京都中央区)を設立。先月25日には設立2周年の事業説明会を行った。
同社は日本での事業展開にあたり、「小売店向けソリューション」、「Dahua Smart Building Solution」、そして「駐車場ソリューション」と3つのサービスに注力する。
駐車場の管理業において、人件コストの高さ、駐車場の監視不足による不正駐車・事故発生の際の責任所在トラブルといった課題がある。また大型駐車場の利用者は駐車スペースの確保やどこに駐車したかわからなくなるなどの困りごともある。これらの課題に対し、提供するのが駐車場向けソリューション。自動車ナンバープレートの認識(ANPR…Automatic number plate recognition)カメラと車室検知カメラを組み合わせ、LED表示灯などと連携。満室状態をLED表示灯で知らせることで、駐車場の空きスペースを確認することができる。
さらに事前に車のナンバーリストを設定しておけば、入り口に設置したANPRと連動し、リストにある車に対してのみ駐車場ゲートを開けることも可能。駐車場の安全性の確保に寄与する。車室検知カメラは屋内駐車場の他、屋外駐車場に対応したモデルも用意。屋外用の場合1台で最大50台までの駐車情報を確認できる。
日本での事業戦略について、Dahua Technology 東南アジア地域統括本部部長の崔宇(サイ・ウ)氏は「日本は世界でも最大規模のセキュリティ市場ならびにIoT市場です。この日本市場のニーズに対応するため、弊社の持つソリューションをローカライズ・最適化・カスタマイズしてまいります。今後もアフターサービス、宣伝広告などを含む継続的なローカライズをすることで、よりよい社会の構築に貢献してまいります」と話す。
今後さらなる躍進が期待されるDahua Technology Japan。今後の展開に注目したい。