不動産トピックス
【今週号の最終面特集】注目企業が生み出す 新しいムーブメント
2023.01.02 14:06
新領域を開拓する商品・サービス 従来にない付加価値を提供
オフィスは単なる「働く場」から、「人々の多様性を受け入れながら、より良いパフォーマンスを実現する舞台」へと進化した。このような変化の波に乗り遅れないためには、賃貸ビルの経営にも新しいアイディアを次々取り入れていく柔軟な姿勢が求められる。新領域を切り拓き、これからムーブメントを起こそうという新しい商品・サービスを紹介したい。
アルミの特性を生かしたパーソナルブース開発
UACJ(東京都千代田区)は、アルミニウムの特長を生かしたパーソナルブース「origami +work(オリガミ プラスワーク)」を開発し、販売を行っている。
アルミニウムは軽量かつ強度があり、加工性にも優れているという特性を持ち、飲料のアルミ缶をはじめ、自動車・飛行機・鉄道車両や、建材・産業機器などの素材に幅広く用いられ、人々の生活に深く関わっている素材である。アルミニウム素材メーカーの国内最大手であるUACJは板製品など様々な素材を供給。先述した自動車や建築、飲料缶、航空・宇宙、IT、医薬品など、様々な分野で同社が供給する素材が活用されている。一方で近年は社内ベンチャーを活用した新しい商品開発にも積極的に取り組んでおり、パーソナルブース「origami +work」もその1つ。開発に携わった経営戦略本部の小髙菜穂子氏は次のように述べる。
「地震や豪雨など自然災害が頻発する国内において、避難を余儀なくされた方々が体育館や集会所などに集まる様子を映像などでよく目にします。しかしながら避難所での生活はプライバシーがほとんど守られず、避難者の方々の精神的な負担は非常に大きなものとなります。災害時でもパーソナルなスペースを設けたい需要に応えたいというのが折りたたみ可能なアルミの箱型空間『origami』開発のきっかけで、まずその第一弾としてコロナ禍で身近な存在となった個室ワークブースとしても活用できる商品として『origami +work』を開発しました」
ビルの共用部や駅構内などで目にする機会の多い個室ワークブースは、高い防音性能と快適な室内空間で移動中のリモートワーク需要に応えている。同社の「origami +work」の最大の特長は、アルミニウム製の特性を生かし折りたたみが可能な機構を採用している点だ。折りたたんだ状態では展開時の半分以下の奥行となり、非常にコンパクトなサイズに収めることが可能。キャスター付きで移動もしやすく、展開する際は一人でも手軽に行うことができる。室内の壁面には吸音パネルを配置しており、防音・遮音性能にも優れ、筐体上部には換気扇を配置することで室内の快適性も実現している。同社は千代田区大手町の東京本社オフィス内に「origami +work」を4台設置。社内ネットワークから事前予約して利用するのだが、オンラインミーティングや集中して業務に取り組みたい際など利用で稼働は良好だという。
UACJはこのほかに総合アルミニウムメーカーならではの商品として、浸水を防ぐアルミニウム製の止水板や長期保存に適したアルミニウム缶の保存水といった、災害時に役立つ商品群も展開している。
「テンポアップ」から「ACRE」へ家賃保証事業を分社化
店舗・事務所といった事業用に特化した不動産仲介業を全国展開するテンポアップ(横浜市西区)は、創業15年を機に新体制を構築。2022年12月1日より「ACRE(エーシーアールイー)株式会社」への商号変更を行うとともに、新たな代表に林正慶氏が就任した。
ACREは新体制のもと、国内でもトップクラスの不動産チェーンとの協業も実現。事業用不動産の管理やサブリースなどの事業も一層加速させるとともに、テナント向けに様々な付加サービスを提供する。
また昨年8月には、これまで社外および社内にサービス提供を行ってきた賃貸保証事業を、更なる販路拡大を目的に分社化。「株式会社TTRUST(ティートラスト)」を設立し、その事業を承継させた。TTRUSTは事務所や店舗といった事業用に特化した賃貸保証サービスを提供する。月額賃料の55カ月分相当額を最大保証額とし、変動費や原状回復費用、残置物の撤去費用も保証対象としている。
保証事業部の森康雄営業部長は「分社化をしたことにより、ACREの管理物件にも保証を利用する事も可能になり、グループ内で連携して事業用ビルの管理・リーシングから家賃保証まで幅広いサービスメニューをご提案できるようになりました」と話す。TTRUSTはすでに国土交通省の家賃債務保証事業者の登録も済んでいるとの事で、ACREグループの今後の展開に期待したい。
三菱地所(東京都千代田区)は、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(札幌市豊平区)が本年3月に開業する北海道北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」内に、ワーケ―ションオフィス「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」を開設する。
新型コロナウイルスの影響により、場所や時間を柔軟に選択できるワークスタイルが一層広まりを見せる中、人が集う意義が改めて問われている。三菱地所は2018年8月よりワーケ―ション事業を展開しており、オフィス商品ラインアップにおいて「イノベーション創出特化型オフィス」として位置づけ、これまでもフレキシブルなワークスタイルに対応する商品・サービスの拡充に努めてきた。
「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」を開設する「北海道ボールパークFビレッジ」は、プロ野球・北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を核とし、約32haの広大な敷地面積に、子どもの遊び場や商空間、グランピング施設、プライベートヴィラなど、野球場の枠を超えた施設が展開され、試合がない日でも楽しめるコミュニティスペースとなる。地域社会の活性化や社会の貢献につながる共働創造空間を目指し、計画が進められている。
「WORK×ation Site 北海道ボールパークFビレッジ」は「エスコンフィールドHOKKAIDO」のレフトスタンドに位置する「TOWER11(タワー・イレブン)」内に設置。新たな観戦体験を提供する「TOWER11」において、「野球場で仕事をする」、「働きながら野球を観る」など、新たな体験を提供し、さらには温泉・サウナ、クラフトビール、グランピングやサイクリングなどの多様な体験を組み合わせた「ボールパーク型ワーケ―ション」を提案する。
自然を眺める「パークサイド」にはチームでのディスカッションが加速するワーケ―ションオフィスを、グラウンドが一望できる「フィールドサイド」にはソロワークや団らんが可能なラウンジ空間を整備。ファイターズの試合日はもちろん、試合がない日でも利用できる施設として、団体やグループでのプロジェクトチーム合宿や研修・チームビルディングなど、利用者のニーズに応じた運営を展開するとしている。