不動産トピックス
【今週号の最終面特集】競争激化のフレキシブルオフィス 運営事業者の動向に迫る
2023.01.30 10:05
国内3拠点目開設で外資受入も想定 新築・中小サイズのオフィス需要 潜在的ニーズ判断し出店
15分単位の従量課金制 個人利用者向けサービス開始
シェアオフィスやコワーキングスペースといったフレキシブルオフィスが現在も増加傾向にある。ニーズはあるが競合が増えたことで、他施設との差別化が重要となった。出店候補地の選択や地域における潜在需要を導きだし、利用者を集めて上手く稼働に繋げなければならない。昨年のオフィスの開設事例と新たに開始したサービスなども交えて紹介する。
9都市50拠点で展開 外資の日本拠点に人気
Compass Offices(以後、コンパスオフィス)は、2009年に香港で誕生したシェアオフィス・コワーキングスペースの運営事業社。昨年6月末に、新築8階建ての「Yotsuya N Clubオフィスタワー」にて「四谷 N クラブ ビジネスセンター」を開設した。
アジアやオセアニアを中心に9都市50拠点で展開し、2万人以上の顧客を抱える。日本では虎ノ門と恵比寿で展開。虎ノ門オフィスは11年、東京メトロ「神谷町」駅直結の「虎ノ門40MTビル」7階で開設。面積は328坪。区画は2~3名の小スペースから、最大25名までの大区画まで用意した。一方13年1月にオープンした恵比寿は「恵比寿グリーングラス」6~9階の4フロアで開業。1フロア90坪ほど。フロアごとに特色や用途が変化しており、特に6階は187m2の広々としたラウンジ空間を設置。オフィスとラウンジをその時の気分や仕事内容で使い分け、会員同士のコミュニケーションも図れる。
入居者は入居時の内装工事や退去時の原状回復工事、保証会社等が不要。月・年単位で契約期間を設定できる。共用設備はリフレッシュも兼ねた休憩スペース、会議室、コワーキングスペース等があり、個室等のセキュリティ対策は厳重。バイリンガルのスタッフが常駐するため、外資系企業の日本オフィスとしても好まれている。その他に成長中のスタートアップやベンチャー、個人事業主、企業の分室・プロジェクト用オフィスにも適している。これらサービスは利用者の声や海外オフィスのニーズも受けて、拡充・対応してきた。
公共サービスや法律 新規需要に対応
昨年6月末には国内3拠点目となる「四谷 N クラブ ビジネスセンター」を開設。JR線・東京メトロ「四ツ谷」駅から徒歩3分に位置し、港区・渋谷区に続き新宿区にも出店となった。施設はフレキシブルオフィススペースとシェアオフィスを提供。ビジネスラウンジと会議室も備え、更に法人仕様のITインフラと高速Wi―Fiも完備。起業家や企業、専門職のビジネスニーズも意識した。会議室は全4室で、4~10名用を用途に合わせて選択できる。もちろん、同施設も受付スタッフが常駐。全個室をカードキーによる入退室で記録管理し、セキュリティ性を重視した。
運営するコンパスオフィス Japan(東京都中央区)カントリーマネージャーの森川和哉氏は「虎ノ門オフィスの利用者は外資系企業や外資との取引の多い国内の企業、バイリンガルのワーカーも見られます。片や恵比寿オフィスは新興のベンチャーやスタートアップ等の利用が多いでしょう。双方立地する地域の特色を上手く拾い上げて、稼働率に繋げています。対して四谷は公共サービス企業や法律専門家のオフィスが多いです。新築オフィスビルも散見されますが、圧倒的に中小の既存ビルの集積した地域です。築年数が経っていること、賃貸区画が大きいこともあるため、新しく適したサイズのオフィス需要が潜在的にあると判断しての開設でした」と語った。
森川氏は東京でのネットワーク拡大について、大都市圏における顧客需要の高まりも背景にあると見ている。東京でビジネスチャンスを探している国際企業(外資系企業なども)は多く、これら企業を呼び込み、受け入れることのできる施設が「四谷 N クラブ ビジネスセンター」とのこと。最少1人から40人までのチーム向けのオフィスにも対応できることが強みである。
就業形態に左右されない個人の登録・利用が可能
フロンティアコンサルティング(東京都千代田区)は昨年9月、「働く人」のためのパーソナルシェアオフィス「comolu(以下、コモル)」を開設。1月23日からは個人利用者向けのサービスも開始した。
同社は改修・移転等に伴うワークプレイスの構築をはじめ、ビル資産価値の再構築、サードプレイス構築などの事業を中心に展開。テナントやビルオーナー、ビル管理会社等とのビジネスが多く、昨今のオフィストレンド等も網羅している。先月には自社初のウェブセミナーを開催。ゲストスピーカーを招きトークセッションを行いながら、現在のオフィス業界が抱える課題や早急に解決が必要な箇所を出し合った上で、解決策を導き出すセミナーとなった。多くの人・企業が視聴し、反響も上々とのこと。
そんな同社では昨年から、パーソナルシェアオフィスのコモルを展開している。渋谷区円山町の「渋谷後藤ビル」5階に第1号店 渋谷道玄坂店を開設。安全性の高いネットワークと、快適なウェブ会議を実現する安定した通信環境を完備。隣室や通路からの雑音を限りなく排除し、遮音性に優れた設計。高集中・長時間のデスクワークでも効率の落ちにくい家具やデザインを採用。リモートワーク等の業務だけでなく、自己啓発や個人学習利用にも適している。リフレッシュや準備・残作業向けに、予約時間の前後30分間利用可能な作業スペースも設置した。利用はサービスサイトからで、15分単位の従量課金制。個室が15分300円で、会議室は15分800円~(双方税抜)。平日は7~21時で、土日祝日は9~18時まで。全室完全予約制で、予約は24時間可能だ。
これまでコモルは法人利用のみであったが、1月23日からは個人利用も開始した。コロナ禍を機に広がった「働く場所」や「働き方」の選択自由を背景に、副(複)業といったフリーランスや個人事業主も増加の一途を辿っている。今回の利用対象拡大は、在籍企業の法人契約の有無に関わらず、就業形態に左右されない個人の柔軟な登録および利用が可能。煩雑な手続きは不要で、支払い用クレジットカードによる会員登録を経て予約・利用が開始。サービス利用後はPDFにて領収書が即時発行される。
同社は柔軟な働き方の浸透に伴い散見する、日々変動する出社人数による執務スペース不足や急速に拡大したオンライン需要による会議室・個室不足の解決、外出先でのサテライト利用の一助となると期待している。今後は他エリアへの出店も計画している。