不動産トピックス
【今週号の最終面特集】新たな領域へ不動産会社のチャレンジ
2023.02.06 11:01
蓄積したノウハウ生かし業容拡大図る 積極投資で新たなテナント層・顧客の開拓を目指す
地元産を活用した設備・内装 未知のフィールドでの挑戦
不動産業界では、多様な働き方に対応した環境の整備、SDGs、健康志向への対応、インバウンド需要の取り込みなど、様々な試みが大手各社を中心に展開されている。新たな事業領域へのチャレンジで企業の成長や収益の拡大を狙う動きは大手だけではない。不動産会社の取り組みを紹介していきたい。
駅前好立地物件を取得 エリア絞ってドミナント戦略
東京・上野、中央通り沿いの「G―SQUARE上野」を所有・運営する高菱商事(東京都台東区)は、昨年12月に千代田区内で新たに物件を取得した。取得した物件は東京メトロ丸の内線「淡路町」駅すぐの好立地で、地上6階建て。靖国通りに面しており視認性も非常に良い。取得の経緯について同社の高橋正晃氏は次のように話す。
「前オーナーの後継者不足に伴い売り物件となっていたところ、不動産会社の紹介で取得することになりました。1979年竣工と旧耐震基準のビルではありますが、駅そばの好立地に加えて住所が1丁目1番地1というプライム性から取得を決断しました」
物件の取得後に高橋氏が取り組んだのが、清掃の作業内容の変更である。清掃頻度を変更するとともに、ビル周辺の清掃についても同氏は新たな試みに着手した。
「これまではビルの前だけが清掃範囲でしたが、隣接するビルの一部にまで清掃範囲を拡大しました。コストはそれほど変わらず、ビルのイメージ戦略につながると考えています」(高橋氏)
今後はビンテージ感を魅力とするビルへのリニューアル工事を実施するとともに、空きフロアを活用してセットアップオフィスを構築し、新たなテナント層の開拓の模索を検討しているという。同社ではJR「神田」駅前にも店舗ビルを所有しており、高橋氏は「神田エリアでのドミナント戦略を積極的に展開していきたいですね」と抱負を述べている。
札幌の不動産会社が手掛けるまちづくり新戦略
不動産賃貸・管理業を営む藤井ビル(札幌市中央区)は今年3月、一棟貸切型のプライベートヴィラ「VILLA BRAMARE(ヴィラ ブラマーレ)」を開業する。
藤井ビルは1959年、すすきののアパート建売業から創業。創業当初は50万人足らずだった札幌市の発展に大きく寄与、総合不動産会社へと成長した。現在は「F―45ビル」をはじめ、札幌市内に住宅・商業・オフィス物件延べ約70棟を保有、約170棟を管理している。
2017年にはホテル事業部を創設。同年にはオフィスビル丸ごと1棟をリノベーションしたホテル「HOTEL POTMUM STAY&COFFEE」を開業。完全プライベートサウナにコワーキングスペース、ブックカフェとしても楽しめるコーヒースタンドも敷設し、札幌市内の既存物件の付加価値創出を成し遂げた。
「VILLA BRAMARE」は、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」ならびにレストラン、ホテル、ショップを一体的に開発した「北海道ボールパークFビレッジ」内に開業。これまでのホテル事業の取り組みが評価され、藤井ビルが大型パークのヴィラの運営を担うこととなった。
総支配人の山下佑樹氏は「当社の札幌外での案件は今回が初。当社が築き上げてきた札幌の街づくりのノウハウを、隣接する北広島市で生かしたいと考えています」と話す。
全9棟のヴィラは2種類。水辺越しに球場やFビレッジを臨める「Waterside Villa」、小高い丘にある専用庭からヴィラを周回できる「Hillside Villa」。約70~80m2の室内には完全個室のプライベートサウナと水風呂、ジェットバスを設え、専用庭には外気浴スペースを設けている。全棟の施工には北海道産の木材を使用。高い断熱性を持つリトアニアドレタ社のトリプルサッシを導入することで、北海道の冬も快適に過ごせる空間を創出した。
さらに昨今、コロナ禍によりペットブームが加速する。「Hillside Villa」では多くの宿泊希望者のニーズに応えるため、ペット同伴での宿泊ができるヴィラも用意した。
「道産のホタテの貝殻を使った漆喰壁やペット専用の足洗い場など、ペット連れのお客様も快適に過ごしていただける設備・内装を整えています。『VILLA BRAMARE』のコンセプトは『五感で愉しむ『静』と『動』』。他者の目を気にせずに過ごせる『静か』なプライベート空間、一歩ヴィラの外に歩みを進めれば、目の前に広がる空間は興奮や感動を味わえる『動』の空間づくりにこだわりました」(山下氏)
宿泊料金は1泊1人2万8800円~(2名1室の場合税抜)。新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を眺望できる景観もヴィラの売りの1つ。山下氏は「自然の中に身を置いて、北海道でしかできない様々な体験を楽しんでいただきたいと思います」とした。
1棟貸切プライベートヴィラ「VILLA BRAMARE」3月開業
北海道ボールパークFビレッジ内に
VILLA BRAMARE 総支配人 山下佑樹氏
名称の「VILLA BRAMARE」はイタリア語で“憧れ”を表す“BRAMARE”と“称賛”を意味する“BRAVO”、北広島市の市木である“楓”を意味する“ARCE”に由来します。「VILLA BRAMARE」ではバスタイムを楽しんで頂けるようにアメニティを特注しています。環境配慮の観点から、シャンプーにはワインを醸造する際に廃棄されてしまう余市町のブドウの皮とリサイクルボトルを活用。入浴剤は無添加のものを使用しています。これらのアメニティはレセプションで購入も可能です。利用者の方々に「心が満たされた。明日からまた頑張ろう。」と活力を感じてもらえるような施設を目指していきたいです。