不動産トピックス

【今週号の最終面特集】AI×不動産管理 最新動向に迫る

2023.05.22 11:21

管理費圧縮と質の高いビル管理実現「管理ロイド」全国2万4000棟以上で採用
AI搭載のクラウドシステム 報告書作成業務丸ごと解消
 AIを活用した不動産管理やメンテナンス業務がビル業界でも浸透しつつある。特に普及が早かったのは検針業務など。報告書とも連動でき、ヒューマンエラーも解消できる。導入した管理会社の信用や管理の質も高まる仕組みだ。オーナーと管理会社の双方にとって魅力的なサービスを、管理会社と企業側の立場から紹介する。
点検・検針・清掃報告 業務負荷を大幅に改善
 THIRD(東京都新宿区、サード)は2019年から、不動産管理のDXを後押しするプラットフォーム「管理ロイド」を提供している。ビル管理会社等を対象に導入件数は増えており、中でも効率化・電子化等に成功したのが東京建物(東京都中央区)だ。
 管理ロイドは、AIを搭載した建物管理のクラウドシステム。使用者はスマートフォンに同名のアプリケーションをダウンロード。アプリから点検・検針・清掃報告などができ、事務所に戻っての報告書作成業務は丸ごと解消された。特に画像認識AIによる高い精度。アプリとウェブシステムのリアルタイム連動。既存報告書への連動と自動出力等により、誤検針の発生を防ぎながら、作業時間や業務負荷を大幅に改善した。アプリから集められた情報は一カ所に集約され、どこからでも物件情報を閲覧できる。現場スタッフだけでなく、管理担当にとっても魅力的だ。
 大手不動産管理会社などを中心に利用社数は増加。ペーパーレスや電子化、遠隔監視での低コスト管理を実現。労働生産性の改善・改良、管理品質の向上などにも貢献してきた。現在は全国で1800社以上、2万4000棟以上で採用されている。中には最大66%の業務効率化に繋がった事例もあるほど。そんな管理ロイドに早くから注目し、利用してきたのが東京建物。きっかけはTHIRDが参加したピッチコンテスト。同社がピッチコンテストで優勝し、その際の交流がきっかけとなり、双方歩み寄っての協業が始まった。

管理ロイドの導入開始 2物件のトライアルから
 東京建物では導入前に、管理業務において様々な課題を抱えていた。例えば、検針業務。これまでの検針業務は誤検針を防ぐため、スタッフ2名による2重チェックで行っていた。報告書は現地で紙に記入。不具合が発生した際の報告書も同様に現地で作成。ヒューマンエラーを防ぐために入念なチェックを行っていたことから、1件の検針業務でも時間と手間を要していた。ここからソフトサービスの拡充を行いたくとも、多大なタスクを抱えたままでは難しい状況であった。
 管理ロイドの導入は、2物件のトライアルから開始。検針は、メーターに付けたQRコードにスマートフォンをかざすだけ。AIが自動で正確に数値を読み取る。精度が他社の検針サービスよりも高く、機能もシンプル。簡単かつ間違うことなく検針できたことから、検針スタッフは2名から1名に。数値は報告書へそのまま反映されるため、資料作成時間も2割ほど削減。業務フローにおける1つ1つの時間が大幅に改善した。本格採用以降は、グループ会社の東京不動産管理(東京都中央区)及び現場スタッフとのシームレスな関係にも貢献。東京建物グループ全体での体制改善にも繋がった。

集約した情報生かしてシミュレーション可能
 THIRDの井上惇社長は「単に現場業務の効率化だけでなく、集約した情報を生かしてのシミュレーションも可能です。サービス内容を再度チェックしながら、各企業に適したより効率的な運用方法を導き出すことができます。コストや運用面での修正と再構築を続けることで、無駄を省きながら高い管理品質を確保できるでしょう。その先のサポート拡充にも繋げることが可能です。自社だけでなくグループ全体のPM業務や新築ビルの開発までもフィードバックできることは強みです」と語った。
 また東京建物の松本氏は、ビルオーナーにもメリットのあることを説明する。「管理費の圧縮と質の高いビル管理に繋がりやすいことです。良質なビル経営を行うには、負担の大きな業務や時間を解消。手厚くするべきサービスや業務へ、注力できる環境にすることです。ビルの管理コストばかりを下げると、管理品質まで下げることになります。管理品質を保つためには、管理業務への投資が重要です。ビル管理における情報共有や先を見据えての提案にも繋がってくるので、ビルオーナーだからこそ管理ロイドを使用するビル管理会社を選択する必要があると思います」と述べる。
 以前から管理業界全体では、人材確保に苦慮している。年々人件費の高騰やBM業務担当者の高齢化なども進行。これら問題解決に、早期でDX化やペーパーレスを進めて、人的タスクの軽減や業務効率化が重要となってきた。
 東京建物は前述の課題解決の視点で、早期から管理ロイドを運用してきた。本格導入以降は使用物件が増加。今年は新たに4物件が加わり、全部で36、37棟ほど。今後は全管理物件への導入を検討している。


ビル管理会社選ぶ指標に
 ビル経営でも非常に重要な項目がビル管理業務。オーナーが複数棟保有する場合やマンション・アパートなどの他のアセットを保有する場合であると、より効率的で各物件に適した質の高い管理業務が必要になる。しかし、管理会社やメンテナンス会社によってはオーナー側が提示する管理業務及び希望に対して、質やクオリティにおいて難しい場合がある。当然、ビルオーナーにはビル管理会社を選ぶ権利がある。より効率的でトラブル発生の少ない企業が好ましい。ビルオーナーも管理会社を選ぶ際に、「AI搭載の建物管理システムを使用しているのか」や「業務効率化に向けて取り組んでいることは何かあるのか」など、事前に聞くことが良いだろう。管理ロイドに限らず、その他の検針アプリやサービスでも同じで、未だ筆記で検針している企業よりも誤検針などのリスクを回避できる。また管理ロイドであると、現状のビル管理業務(状況)を集約した情報を生かして、客観的に把握もできる。質の高い管理状況を維持するためにも必要なシステムと思われる。




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