不動産トピックス
クローズアップ 不動産再生編
2023.06.05 10:29
安定した賃料収入をもたらしている物件でも、アプローチを変えてみればさらなる収益力アップの余地が見いだせることも珍しくない。既存ストックの活用や再生、用途変更などによる収益力拡大の可能性は、つねに考慮しておきたい。
リニア中央新幹線などの将来性見込み「柳橋Food Market」取得 コロナ禍から緩やかに回復基調 将来的にファンド組入れも視野
店舗流通ネット(東京都港区、TRNグループ)は3月1日、「名古屋」駅徒歩5分の商業ビル「柳橋Food Market」を取得。リニア中央新幹線開通など、更なる発展が見られる地域での物件取得となった。
TRNグループは、駅前立地の店舗不動産に特化した物件の取得・開発を行ってきた。開発用地の仕入れ、設計・建築、リーシング、管理までワンストップで対応。既存の収益物件の購入時には、法的治癒や是正工事を実施。遵法性が脆弱である傾向の店舗不動産に流動性を生み出す。これまでに全24棟の「TRN」と「TRUNK」を冠とする2ブランドを所有、またはファンド物件として展開している。対象エリアは都心や政令指定都市などの駅前。取得物件であれば、自社スタッフでリーシングの継続ができるか否かが焦点となる。今後の成長性や安定した収益確保も判断材料となる。
今回取得した「柳橋Food Market」は、JR線・私鉄各線「名古屋」駅徒歩5分、中村区名駅4丁目に位置する店舗テナントで構成された商業ビル。1984年3月竣工のSRC造・地上7階建て。延床面積1040・41㎡の中小規模。2016年よりTRNグループでマスターリースを行っており、これまでにコンバージョン、リーシング、建物管理まで一貫して対応してきた。現在も飲食店を中心に満室稼働を維持している。
今回取得に至った要因は複数あるが、特に重視している箇所は駅周辺の将来性。同ビルが27年開通予定のリニア中央新幹線や新設構想の地下鉄「柳橋」駅(仮称)など、今後更なる発展の期待が掛かる貴重なエリアに位置している。加えて周辺に明治時代から続く伝統のある「柳橋中央市場」も立地。古くから市場として賑わっていたため、食文化が根付いたエリアとして、今後も引き続き飲食店の出店需要を見込んだ。これら将来性・発展性を期待して取得に至った。
またビルは元々オフィス用途であったが、店舗向けの商業ビルにコンバージョンしている。TRNグループが、コンバージョンを前提に遊休不動産だった同ビルをマスターリース。当時同エリアは現在よりもオフィス需要の高い地域で、店舗ニーズの高い地域へ変化していった。その後、現在も飲食店は増加傾向にある。コロナ禍から緩やかに回復基調にあり、今年3月頃からは来客数も戻りだしている。加えて同ビルは期間中にも関わらず1店舗も退去がなかった。これら優位性も背景にある。同社は将来的に、ファンドへの組入れも視野に入れている。
店舗流通ネット 執行役員の金子貴是氏は「『柳橋Food Market』も出口戦略として、ファンドへの組入れも視野に入れて取得しました。その後は当社グループがアセットマネジメント契約を結び、今後も運営管理に携わっていきます。当社は築年数の経過や周辺環境の変化に伴い資産価値が低減した建物を取得し、リテナントや遵法性の是正等を通じてバリューアップすることを得意としています。資産価値を向上させた上で、投資商品としてファンドへの組入れを行うこと、組み入れ後もグループ内でAMPMでの関与を継続することによって、高いリーシング力を生かし安定的な運用を行っています。今後も魅力ある店舗不動産の開発・管理を通じて街の発展に寄り添い、日常をより豊かにする最良のパートナーであり続けます」と語った。
積水化学とリノベるが業務提携 住宅ストックの循環型マーケット創造を目指す
積水化学工業住宅カンパニー(大阪市北区、積水化学)と、リノべる(東京都港区)が資本業務提携を締結し、住宅ストックのバリューアップと流通促進に注力している。
今回の提携で両社は、戸建住宅とマンションのリノベーション事業について、顧客ニーズを捉えた高品質・高性能なリノベーション事業を拡大するとしている。
具体的には、リノベるが保有するWEBマッチングプラットフォーム、パートナーとのネットワークと、積水化学の豊富な戸建ストック、グループ総合力を生かした全国規模のアフターサポート体制とを接合させることで、認知度向上、マーケット活性化につなげる。また、積水化学の技術による堅牢な躯体性能、マンション高性能化リノベーション工法と、リノベるのマンションリノベーションノウハウ・企画設計力とのシナジーによる、高性能化と快適な住空間の提供を目指す。
積水化学は、1971年よりユニット工法による工業化住宅「セキスイハイム」ブランドを展開し、60万戸を超える住宅を供給。リノベるは2010年の創業から、中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」を展開。これまでに5500戸超のリノベーション住宅を提供している。
両社は「今回の資本業務提携で両社の強みを融合させ、戸建住宅とマンションの両ストック領域においてバリューアップや流通を促進し、永く住み継がれるサステナブルな循環型社会の実現を目指す」としている。
CBRE 「アーバン札幌ビル」のオフィスビル化をサポート
CBRE(東京都千代田区)は、札幌中央アーバン(札幌市中央区)が保有する「アーバン札幌ビル」の商業ビルからオフィスビルへのコンバージョンと、オフィス賃貸仲介サポートを実施した。
同ビルは1986年1月竣工。延床面積1万593㎡、地上8階地下2階建てで、地下鉄「すすきの」駅3分の好立地に立つ。商業ビルからオフィスビルへのコンバージョンは、地下1階の一部区画と地上2~6階の計6フロアで実施。当初は6階のみを試験的にコンバージョンする予定のところ、多数の引き合いがあったことから2~5階もコンバージョンすることとなったという。
CBREは、コロナ禍の影響等によりテナント退去予定となっていた同ビルの4~6階(各階約270坪)のリーシング依頼のあった札幌中央アーバンに対し、商業ビルからオフィスビルへの転用を提案。2021年6月に専任媒介契約を締結し、プロジェクトをスタートさせていた。