不動産トピックス
【今週号の最終面特集】ビルオーナー必見 オフィスのリスクマネジメント
2023.07.24 10:19
オフィスのセキュリティや契約時の不審人物対策に
ノウハウと最新技術をいかしたサービスに注目
ビルの安全性を確保するためには、テクノロジーやデータベースの活用は不可欠。ビルで発生する事件も目立つ中、ビルの管理リスクマネジメントに繋がる最新のサービスを取り上げたい。
無人受付システムを展開 高度なセキュリティ対策を実現
富士ソフト(横浜市中区、東証プライム市場)は、無人受付システム「moreReception」を提供している。
オフィスのエントランス、または一定規模のオフィスビルの窓口に無人の受付システムを置く。今や常識と言っても過言ではない。
そんななか、独立系ソフトウェア開発の大手:富士ソフトが受付システムに参入したのは約7年前。背景をプロダクト事業本部 moreReception室 主任の井上椋太氏は「様々な企業様と取引を行う中で、記帳やお客様対応といった受付業務の煩雑な手続きを、当社のシステム開発のノウハウを生かして解決できないかと考えたことがはじまりです」と話す。
「moreReception」は、使い勝手、機能や利用環境などをクライアントの受付運用にあわせて選択できる自由度の高さなどが魅力だ。躯体は床に直置きできる「フロアタイプ」に加え、デスクに置く「カウンタータイプ」と「コンパクトタイプ」の3種類。受付方法は内線呼び出しのほか、QRコードの読み取りと入館証を発行する形式が選べる。
サーバーには、自社のセキュリティポリシーに準じて使えるオンプレミスサーバーと、サーバー運用の手間が不要なクラウドサーバーの2種類を用意。オフィスビルの総合受付に導入する場合、ビルの管理者は各テナント企業に「moreReception」の受付情報管理サイトを発行。ビル全体の来客情報や入退館履歴を閲覧、検索できるほか、それらのデータをCSV形式で出力することも可能。セキュリティゲートや有人受付など、従来型の受付運用と連携させることで、運用のコストや手間を省くことにつながる。
中でも「moreReception」の特筆すべき強みは、万全を期したセキュリティ対策にある。井上氏は、「サイバー攻撃は高度化、巧妙化しているため、脆弱性情報を広く収集し、対策を講じる必要がある場合には、オンプレミス構成でご利用いただいているお客様であっても、当社から提供する対策モジュールを、ビル管理者がmoreReceptionサーバーに簡単に適用できる機能を搭載しています」と話す。
さらに、セキュリティを設けたい範囲を決めて、追加入館者証の発行有無、受付画面の個人情報の表示制限なども可能。入館後の滞在時間に制限を設けることもできる。入館者証としてICカードを使用する場合は、ICカードを誤って持ち帰られると管理者にアラートで通知。入退館を取りこぼしなく管理することができる。
「moreReception」は操作の容易性や受付業務の効率化、そしてセキュリティの高さが支持されている。
今後は有人を併用したハイブリッドな受付の運用方法に焦点を当てた、プロダクトの改善を行っていく方針だ。秋葉原の拠点で受付担当を長年務めていた、プロダクト事業本部 moreReception室の上野実加氏は「VIPの方や一般のお客様、クライアントの方、業者の方まで、オフィスには一日を通して様々な方がいらっしゃいます。来館された皆様方に対し、受付スタッフとして、画一的な対応を行うことは現実的ではありません。有人受付にプラスして無人受付システムを導入することで、業務の効率化を目指しながらも、ホスピタリティを追求できるのではないかと考えています」とした。
反社チェックサービスを提供 契約時のリスク対策に
入居前に、テナントの安全性を調べることも大切だ。
エス・ピー・ネットワーク(東京都杉並区)は、ネガティブチェックツール「SP RISK SEARCHR」を提供している。
同社は1996年、元警視庁の渡部洋介氏と熊谷信孝氏の2名により設立された。商業店舗でのクレーム対応を主とした警備業にはじまり、暴力団員の排除につなげた実績から、現在は反社会的勢力の判別・調査にまで事業の幅を広げている。
取締役副社長の芳賀恒人氏は「警察は、『何か起きてから』対応せざるを得ないケースが大半。警察が介入できない民事において、重大な事態を防げることが、当社のサービスの最大の強みです」と話す。
「SP RISK SEARCHR」では、対象者について反社会勢力であるかどうかを一気通貫で調査。ビルの賃貸契約時や入居時のリスクマネジメントに寄与する。
具体的な調査方法を挙げる。調査方法のメインとなるのが「Quickスクリーニング・システム」だ。
「Quickスクリーニング・システム」は、1960年以降の新聞記事をもとに作り上げた、同社独自の反社会勢力にかかる国内屈指の公知情報データベース。原典の人物名をそのまま記録し、事件・事故の概要をコンパクトに抽出。その先の深堀り調査では経歴に怪しい点がないかを調べる。調査にあたっては、無論現在の新聞記事や各種インターネット情報も活用。ほかには対象者のSNS投稿や商業登記、不動産登記といったなどを情報源としている。
企業情報部 部長代理の小林知哲氏は「個人・法人どちらの調査を行うことも可能です。例えば都市の区画整備の際には、ブロック単位でビルオーナー様を調査することもあります。当社のQuickスクリーニング・システムやその先の調査で見つかった懸念事項によっては、警察への相談同行も実施。調査結果の報告書を警察の担当者に提出するまで責任を果たします」と話す。
不動産契約時や融資の際のリスクマネジメントは不可欠だ。その教訓として記憶に新しいのが、2017年に東京・五反田で起きた地面師事件。大手住宅メーカーが所有者を名乗る女性から、土地代約55億をだまし取られたとして、地面師グループ10名が起訴された事件である。リスクマネジメントを行うことが、億単位の大きな損失を防ぐことにもつながる。
「近年は、暴力団に限らず半グレや『自称実業家』の人などの犯罪も目立ちます。自分の管理している物件においては、ファミリー向けの住宅物件なのに一人しか出入りしなかったり、頑なに設備点検に協力してくれない人は注視した方がよさそうです。『SP RISK SEARCHR』では現在、140万人以上の要人のデータベースを収録した海外のコンプライアンスチェックサービスまで、事業の幅を拡大しています。今後も独自のデータベースを生かして、より多くの人々の安全に寄与していきたいと考えています」(芳賀氏)。