不動産トピックス
今週の一冊
2023.08.07 10:19
池袋は袋状の地形だった?
全国水害地名をゆく
著者:谷川 彰英
出版:集英社
発行:2023年8月12日
価格:1012円(税込)
夏の時期になると、局地的で短時間の強い雨や、同じ場所で長時間にわたって強い雨が降り続ける現象が多発し、全国各地で豪雨被害が報告される。都市のインフラ設備が未発達であった近世以前の日本では、降雨によってたびたび河川がはん濫し、周辺地域に住む人々に大きな被害をもたらしてきた。その被害の痕跡をたどる手がかりとなるのが「地名」である。
地名には当然ながら由来がある。一方で都市を中心に人々が暮らしやすい整備が行われた結果、地名の由来となった地形が現存せず、地名のみ名残をとどめているというケースは非常に多い。本書は地名と水害との関連性に着目した一冊となっている。今でこそ平穏無事な街であっても、地名に隠されたその土地の本来の姿を知ることになるだろう。
本書は国内の各地方に点在する、水害にまつわる地名を紹介する。関東地方では池袋、落合、浦安などの地名の由来と、地域の水害の歴史について振り返っている。池袋は日本を代表する繁華街の一つ。しかし、古来より認識されてきた池袋地域は南北に長く、街の北端にあたる現在の豊島区池袋本町は袋状の窪地となっており、雨が降ると池が点在したことが池袋の地名の由来となった。このように、現在の地名が表す地域と、その由来となった地域が異なることは全国各地に存在する。災害リスク軽減を目指す上で、地域の歴史を学び直すきっかけを与えてくれる一冊である。