不動産トピックス
クローズアップ 省エネ・環境負荷低減編
2023.09.18 13:17
不動産オーナーにとって、省エネや環境負荷低減への取り組みは「選ばれる物件」になるため必須といっていい。エネルギーコストやCO2排出量を減らし、テナントとメリットを共有したい。
成功報酬型の節電サービス センサー管理で使用量削減も単価低減も
エネクラウド(東京都渋谷区)は、需要家・供給家の双方へ電気に関する最適化を提案している。その中心となるサービスがクラウドシリーズだ。
クラウドシリーズは「電気削減クラウド」と「電気管理クラウド」がある。電気削減クラウドは、同社前身の日本電気サービス(東京都渋谷区)の時から提供していた電力会社との契約内容最適化(見直し)サービス。リリースは2019年2月。21年8月に現社名へ変更した際に、サービス名も同名称へ変更した。需要家の使用電力におけるビッグデータを元に、シミュレーションを実施。総合的に電気料金の最適価格を算出。同価格を元にして、入札プラットフォーム「ENEBID(エネビット)」を活用。電気事業社と需要家を繋ぎつつ、50社以上の事業社が加盟するENEBIDによる公正な適切価格での入札で、大幅な電気料金の削減が可能となる。
特徴は、「料金が下がらなければ0円」の完全成果報酬型。電気料金が下がったことを確認できた後に支払いとなる。「電気料金が下がらなかった場合には料金は一切いただかない」という自信が、同サービス利用者からの満足度の高さを伺える。契約期間は利用料金発生から5年間。サービス利用料は、契約中のプランと比較した削減額の50%となる。導入実績は今年2月末時点で1787施設。毎月70~80万円の電気使用料金が発生している施設や企業からの利用が多い。
一方電気管理クラウドは、電気使用量の把握と使用量削減コンサルティングを組み合わせたサービス。より精度の高い電気使用量の計測・見える化と、コンサルティングによる電気使用量の一層の削減を目指すもの。独自IoTセンサー「EMIΘ(エミシータ)」をスマートメーターに接続。セクションごとに使用量を計測でき、デマンド監視による電気使用量の平準化や月次コンサルティングレポートで改善継続を行う。また工場の場合、ラインごと、大型機器ごと、部屋ごと、照明や空調等のセクションごとに計測できる。詳細に現状の電気使用状況が把握でき、その情報から使用量削減に繋げる。
田嶋義輝社長は「エミシータは狭い空間でも場所を取らない省スペース設計で、分電盤に収納可能な小型のIoTセンサーです。1台あたりの電気使用量測定可能箇所は、36箇所と多いことが強み。多チャンネル化により多台数の導入が不要で、導入コストは従前の5分の1以下となりました。ちなみにエミシータ1台約30万円。投資回収年数は3~4年ほどと見ています」と語った。
電気削減クラウドでは、電気料金の「単価」を削減。電気管理クラウドでは電気の「使用量」を削減する。双方の強みを駆使して、今後はSDGsなどの目線でも積極的に広めていく姿勢だ。
ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実証実験 大和ハウスなど蓄電池連携システムとカーボンニュートラルガスで
大和ハウス工業(大阪市北区)と大和リビング(東京都新宿区)、エネルギー事業を展開するサンワ(群馬県前橋市)は、「ネット・カーボンマイナス賃貸住宅」の実用化に向けた実証実験を、2023年12月27日から2年間実施する。
実証実験は、サンワが事業主となる新築賃貸住宅「(仮称)エコンフォート前橋駒形」の全戸に「全天候型3電池連携システム」を搭載。ガスには「カーボンニュートラルLPガス」を採用し、設備のエネルギー供給状況・稼働率、余剰電力量のデータを集積。分析・評価を行う。
「全天候型3電池連携システム」は、太陽光発電とエネファーム、リチウムイオン蓄電池を連携させ、通常時の光熱費を削減。雨天時でも約10日間の停電に対応可能。「カーボンニュートラルLPガス」は、採取から最終利用までに排出されるCO2を植林などによる環境保全活動などで差し引き、実質「ゼロ」とみなすプロパンガス。
大林組 ZEB評価システム開発 高精度な自動計算で認証申請が簡便に
大林組(東京都港区)は、イズミシステム設計(東京都新宿区)と共同で、ZEB認証の申請に必要な省エネ性能計算情報を自動抽出する業界初の設計支援システム「SmoothSEK(スムーズセック)」を開発した。
「SmoothSEK」は、すべての関連情報を連動させた「BIMワンモデル」と連携することで、省エネルギー性能の評価を正確かつ円滑に行えるようになるという。大林組は、すでに「BIMワンモデル」と相互連携し各種性能評価に必要な情報を抽出できるシステムを運用してきた。そこに「SmoothSEK」が加わることで、より高度で効率的な法的審査情報の抽出が可能となるとしている。
建築物のZEB化ニーズが高まるなか、ZEB認証申請でこれまで一般的だったのは、省エネ法に基づく「標準入力法」を用いた算出方法。膨大な情報を抽出し、計算プログラムに取り込むための入力シートを手動で作成するなど、多大な時間と労力が必要となっていた。
鉄道部品をリノベマンションに
京浜急行電鉄(横浜市西区、京急)は、引退した鉄道車両の部品を活用したマンション「プライムフィット横浜富岡」を、2024年2月から販売する。築28年の企業社宅をリノベーションした。
立地は「京急富岡」駅徒歩17分。建物は敷地面積4180・47㎡、鉄筋コンクリート造の地上6階建てで、販売戸数64戸。間取りは1LDK~3LDK。引渡は2024年3月を予定している。
共用部には鉄道業界で初めて、引退した鉄道車両の部品を利活用する。共用部の集会スペースやワークスペースのソファに車両の座席を使用し、荷物を置く網棚を活用した飾り棚を設置。ワークスペースの入室表示には車側灯、建物の階数表示には車両番号銘板を使用する。