不動産トピックス

【今週号の最終面特集】不動産業界SDGsトレンド

2023.09.25 10:57

企業価値向上に貢献するリユース・リサイクル 「ファッションロス」解決の一手となるか
冬季イルミベメントで活用 ツリーのオーナメントに
 今月、米国ニューヨークにて国連総会が行われ、目下の懸案事項となっている紛争問題のみならず、地球環境や気候変動といった議題についても各国代表の意見が述べられた。この課題を克服するために、個人単位でできることはもちろんのこと、企業・組織単位で実践できる取り組みはまだまだ残されている。

不要となった衣服を回収 循環型社会の実現目指す
 東京建物(東京都中央区)は、中央区京橋の大規模複合ビル「東京スクエアガーデン」において、今月14日から21日まで、オフィスワーカーや来館客から不要となった衣服を専用ボックスで回収する「洋服REUSE WEEK(リユースウィーク)」を実施した。集めた洋服は23日に開催された服の交換イベント「SUSTAINABLE FASHION FES(サステナブルファッションフェス)」で活用されたほか、「東京スクエアガーデン」での冬季イルミネーションのシンボルとなるクリスマスツリーのオーナメントにアップサイクルされる予定である。
 近年、世界中で毎年約3000億着もの洋服が廃棄処分されており、ファッションロスが深刻な問題となっている。東京建物グループは「循環型社会の推進」をマテリアリティ(事業との関連性が高い重要課題)の一つとして掲げており、これまでにも廃プラスチックのマテリアルリサイクルや、廃棄物を利用したフラワーアートの制作など、様々な取り組みを行ってきた。
 今回の取り組みは、国連総会の会期に合わせ持続可能な開発目標(SDGs)の推進と達成に向けて意識を高め、行動を喚起する「グローバル・ゴールズ・ウィーク」に合わせて実施され、洋服を元の持ち主から新たに必要としている人に届けるとともに、資源としての洋服の再利用を通じて街の彩りとにぎわい創出への貢献を目指す。なお洋服の回収や服の交換イベントにおいては、「東京スクエアガーデン」6階のベンチャーコミュニティ「シティラボ東京」の参画企業であるウィファブリック(大阪市西区)と連携の上、実施された。
 洋服の回収ボックスはイベント期間中、「東京スクエアガーデン」1階のオフィスエントランスに設置され、23日には同ビル地下1階の駅前広場において洋服の交換会やフリーマーケットが開催された。また「東京スクエアガーデン」では毎年11月上旬から冬季イルミネーションが実施されているが、本年はイルミネーションのシンボルとなるクリスマスツリーを飾るオーナメントの製作をアート作家のイワミズアサコ氏が担当。古着や残布、端材を使用し、イワミズ氏独自の「キメコミアート」(伝統工芸「木目込み人形」より着想を得たオリジナルの技法で、接着剤を使わず廃材の発泡スチロールなどの柔らかいパネルにさまざまな色や柄の布の端を丁寧に埋め込むことで仕上げるアート)によって製作される。オーナメントの製作にあたっては、来月5日および7日にイワミズ氏とともに製作するワークショップの開催も予定されている。

色合い・質感そのまま建材として再利用
 アパレル業界では、まだ使えるにもかかわらず新品・中古の衣服が廃棄される「ファッションロス」が深刻な課題となっている。日本国内では年間に生産される衣服およそ29億着のうち15億着が新品のまま廃棄されているとされ、リサイクル率はアルミ缶よりも低いといわれている。一方で近年はサステナブルの観点からリユース・リサイクルの取り組みが活発になりつつあり、建築分野への活用も徐々に進みつつある。
 ITサービスや空間プロデュースなどを手掛けるbeero(東京都渋谷区)は、デニムを再利用した建材、「DENIM STONE」を開発。同社の越島悠介社長は「サステナビリティという価値観は『新しい価値観』と捉えられがちですが、元来日本に『もったいない』という文化があり、決して親しみのない目新しいものではなく、むしろ私たちの根底に根付いている慣れ親しんだ価値観であると思います」と話す。地球温暖化やCO2排出などの切迫した様々な環境問題に直面している中で、世界的な取り組みとして関心を高めるSDGsへの活動に対して、ものづくりの要素を落とし込んだ商品として「urgent undo」の商品展開がスタートした。
 「DENIM STONE」は、衣類の中でも150年もの間デザイン・機能的に洗練されてきたデニムを、デニムの持つ価値を損なわないように再生できるか何度も挑戦し続けて生み出された商品。日本の伝統技術である和紙漉きの技術を応用し、デニムを繊維の状態に戻し、麻などの天然素材を混入させ硬化させることで、デニムの色合いや質感を残したままで造作性の高い建材用の素材として生まれ変わらせている。国内でも類似商品が開発され始めているが、MDFやパーティクルボードのように粉末に近いレベルまで粉砕して固めるという製法が多いなか、同社では手に取った時にもともとの衣服が持つ素材、質感が感じられるようにな製造方法を確立している。越島氏によればデニムのほかセーターなどの素材でも活用が可能だという。建材はテーブルの天板や椅子の座面など家具の面材として活用できるほか、床・壁材としても商品化が実現している。
 「DENIM STONE」は環境負荷の低減に貢献する建材として大手不動産会社も注目。東京・渋谷で隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修を手掛けた東急不動産本社オフィスに床材として「DENIM STONE」が使用され、また東京・有楽町の大手不動産会社がリノベーションを行うビルではサスティナブルな家具として「KU “air”chair 1.0」が採用された。
 beeroでは、日本人の持つ「もったいない」文化に立ち返り、環境負荷低減に寄与するものづくりを通してSDGs・サスティナビリティを体現していく。特にものづくりにおいては、サステナビリティは特別ではなく当たり前のこととして捉え、その上で選択したくなるデザイン性を持ち合わせる商品づくりに注力し、様々な人に手に取ってもらえる商品を生み出すことにより、環境と社会に貢献できる仕組みの構築に取り組むとのこと。

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