不動産トピックス

【今週の最終面特集】シェア型賃貸住宅の最新動向

2024.01.22 11:16

「シェアプレイスHARUMIFLAG」開設 法人向け「共創型社宅」としても提案
 賃貸住宅では以前から「シェア」の考え方が普及しており、様々な場所・地域で展開されてきた。その多くが既存物件を生かしながら、改修などを経ての実例であったが、昨今は新築マンションでも取り入れる事例がある。企業の社宅需要とも上手く合致して展開しているようだ。

プライベートな個室と共用スペースで構築
 リビタ(東京都目黒区)は「HARUMI FLAG PORT VILLAGE」内で、シェア型賃貸住宅「シェアプレイス HARUMI FLAG」を開設。既に法人向け入居受付は始まっており、今月から入居を開始する。
 物件のハード面におけるリノベーション、ソフト面におけるシェアリングエコノミーやコミュニティづくりを組み合わせての様々なサービスを展開してきた。働く・集うなどの事業領域においては、シェア型賃貸住宅「シェアプレイス」、多機能交流型賃貸住宅「Well―Blend(ウェルブレンド)」、シェアオフィス「12(ジュウニ)」、コミュニティスペース「BUKATSUDO」や「SHAKOBA」などの実績がある。今回はシェアプレイスのビジネスモデルを採用しつつ、昨今の健康経営や「HARUMI FLAG」にも適した内容に仕上げた。
 シェア型賃貸住宅「シェアプレイス」はプライベートな時間・環境が確保された個室と、コミュニティが広がる共用スペースで造られたシェア型の賃貸住居。個室内にキッチンやシャワーなどの設備はなく、水まわり設備をシェアしながら暮らす仕組み。清掃やセキュリティなどはしっかりと施しつつ、施設の運営管理にリビタが自ら携わる。特に共用スペースの清掃は業者が行うため、日々忙しいワーカーには合理的な環境となっている。個室内の家具も必要最低限となっており、その他家電を皆でシェアする。入居者同士が近すぎないかつ遠すぎない距離設計を行い、顔が見える運営体制を採用している。24年1月時点で同ブランドの実績は、19棟1201室にも及ぶ。

新築マンションのPJ D棟7~9階で実施
 「シェアプレイス HARUMI FLAG」は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地を再開発した街区に建つ新築マンションでのプロジェクト。都営地下鉄大江戸線「勝どき」駅から徒歩16分、「HARUMI FLAG PORT VILLAGE」D棟にシェア型賃貸住宅を設けた。建物自体はRC造・地上15階地下1階建てで、7~9階で実施。個室数は58戸、ユニットタイプは13戸(56室)。建物所有者はJV10社で、2021年に運営事業者のコンペでリビタが選ばれた。スタンダードな1ルームタイプは25・16㎡~28・46㎡。賃料は月額11万4000円~12万6000円を予定。共益費1万円で、水光熱費は個別契約。今回は室内にシャワーブースやトイレ、独立洗面台、洗濯パン、ネット(無料)などを設けている。
 一方注目度の高い設備がユニットタイプ。1つのユニットに4部屋と、シャワーやキッチン、洗濯機などの共用設備が施されている。面積は74・63㎡~92・09㎡。賃料は月額32万円~40万円を予定。共益費4~5万円だ。同物件は企業の健康経営にアプローチしながら、共創を促す社宅としても構築した。一般入居募集に先立ち、法人向け入居受付も開始している。企業が1ユニットを借りて、自社社員が4部屋に入居する(社宅として活用する)ことができる。運営事業本部 プロパティマネジメント部 営業推進第1グループの加藤陽介氏は「企画背景に健康経営・福利厚生への注目の高まり、福利厚生における借り上げ社宅需要への変化、リモートワーク環境下における社員のコミュニケーション不足の深刻化などがあります。これら課題に対し、シェア型賃貸住宅の特性を生かすことで健康経営へアプローチする『共創型社宅』という新たな社宅の在り方となりました。従来の単一企業の社員が住まう寮・社宅ではない、多種多様な企業に勤める社員やフリーランス、起業家から学生まで、志を持った様々な人が出会い繋がる共創の場となることを目指していくものです」と語った。

入居者同士のサークル活動 コミュニケーションを促す
 施設内には他に、24時間使用可能な入居者専用のシェアラウンジ、シェアキッチン、シアタールームなどを設けている。加えて「HARUMI FLAG PORT VILLAGE」内にある大浴場、ワークスペース、ミーティングルーム、フィットネスルーム、イベントスペース、パーティルーム、シアタールームも利用可能。大浴場やワークスペース、フィットネスは無料。その他は有料となる。フィットネスルームや大浴場では運動習慣やセルフメンテナンスという視点で、シェアラウンジやシアタールームなどは入居者同士の日常的なコミュニケーションを促す。
 またイベントの開催や同じ趣味を持つ入居者同士のサークル活動支援、オンライン上でのコミュニケーションが図れるツールの導入なども想定している。普段の生活では出会うことのない多世代多業種の入居者との交流機会、共創を促すきっかけを提供し、住まいから生まれる交流が社員の成長機会にも繋がり、社会的な健康を支える仕組みとなる。更に入居企業担当者の運営管理への負担も軽減する。通常借り上げ社宅とされるマンスリーマンションや賃貸アパートマンションの法人契約は、入居時及び入居後に企業側の管理の手間やコスト面で負担となる場合が多い。同物件では契約時のインフラ整備やアフターサポート、運営サポートをリビタが担当。オフィス内ではカバーしきれない福利厚生領域のサポートも行う。今後求められていく賃貸住居の在り方が、同物件の事例と思われる。


社有社宅よりも借り上げ社宅 リスク少ない社宅需要へ変化
リビタ 運営事業本部 プロパティマネジメント部 営業推進第1グループ 加藤陽介氏
 企画背景には「健康経営・福利厚生への注目の高まり」、「借り上げ社宅需要への変化」、「リモートワーク環境下における社員のコミュニケーション不足の深刻化」などが挙げられます。経済産業省が2014年より実施する「健康経営度調査」によると、健康経営の推進に関する全社方針を明文化している企業の割合は14年時点で53・3%。これが22年度では93・1%にまで増加と、重要性が増しています。福利厚生も近年重要度が増しており、労務研究所が行った福利厚生の代表的な17項目の導入率を企業67社に聞いた調査では、独身寮・社宅制度を導入している企業が85・1%。社宅は一般的に企業が自社で保有する「社有社宅」と、不動産業者が所有する賃貸物件を借り上げて従業員へ貸し出す「借り上げ社宅」の2種類に分けられます。社有社宅の割合は2000年に50%を超えていましたが、22年には15・2%まで減少。現在は管理運営面でリスクの少ない借り上げ社宅へと企業の需要が変化しているようです。またリモートワークにおける課題について企業・団体533社の従業員に聞いた調査によると、「従業員間(新入社員含む)のコミュニケーションの減少」を挙げた人は84・9%でした。対して「在宅勤務増加に伴うストレス増加やコミュニケーション不足への対応を実施しているか」を一般企業175社に聞いた調査では、「実施している」と回答したのは17・9%。コミュニケーション不足を引き起こしているリモートワーク環境下でのメンタルヘルスケア対策に対応できていない企業が、まだまだ多いことが分かりました。これらを総合的に踏まえた結果、共創型の社宅が現在求められていると把握しました。 




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