不動産トピックス

【今週号の最終面特集】引越し移転時に便利 需要増加の宅配サービスに注目

2024.02.19 10:33

スマートフォンで対応完結・宅配型収納サービス 都市部及び不動産業界で普及拡大
 2~4月にかけて引越しが多くなり、業者にとっては繁忙期となる。その時期に需要の伸びるサービスが宅配型のトランクルーム。これからの季節に使わなくなるシーズン物などを収納することができる。小規模な企業であれば、移転時やオフィスレイアウト変更等と一緒に手軽に利用できる。

収納容積に合わせて対応 預かり取出を完全無料化
 ゲオホールディングス(名古屋市中区)のグループ会社・ゲオ(東京本部、東京都豊島区)は、配送無料の宅配型収納サービス「2nd STORAGE」を展開している。
 2nd STORAGEは2022年3月から開始した、預かり・取り出しに掛かる料金を完全無料化した宅配収納サービス。預かり・取り出しの送料は何度でも無料。1点だけの取り出しも可能だ。2人以上での搬入・搬出が必要な大型荷物は別途配送料が発生するが、1人で運べる荷物であれば手軽で安価。荷物を収納する保管用段ボール(梱包資材)も無料であり、ユーザー目線での複数の収納プランを用意している。料金は0・25畳、0・5~5畳のスペース(容積)内に荷物・アイテムが収納できた上で算出。0・25畳のエントリープランであれば、全て段ボールで預けた場合に14箱が収納可能。収納料金は4980円で、当金額に月額の保管料が発生すると月額5500円ほどとなる。0・5畳では29箱が収納可能。5畳まで収納容積を広げることができ、容積に合わせて保管料も変動する。
 2nd STORAGEはほぼ全サービスをスマートフォンで完結できることも強み。預けた荷物は1点ずつスタッフが撮影し、ユーザーはいつでもスマートフォンから確認可能。取り出しは写真をクリックして申し込むだけ。撮影されたくない荷物や小さな荷物は段ボールに収納・まとめれば、開けずにそのまま取り出しできる。倉庫は温度25度・湿度65%以下に保たれ、空気循環されたクリーンな環境を維持。24時間の機械警備に加え、生体認証システムを設置。セキュリティも万全な保管環境である。
 トランク事業部の内山憲一氏は「サービス対象エリアを年々拡大しており、昨年9月には東京23区全域でサービスをできるようになりました。使わなくなったベビー用品やキッズ用品、シーズン物の衣類やレジャー用品、冠婚葬祭用の衣類なども定番です。当社ではオプションとして、預けた衣類のクリーニングを行っています。専門会社が対応し、クリーニング後は保管用ハンガーへ掛け替え、防虫カバーを掛けて丁寧に保管します。これから暖かくなるので、コートやジャケット類の収納には最適と思います。高級ダウン・ハイブランド品もデラックスクリーニングにて承ります」と語った。
 現在ユーザーから好評なサービスに、収納物の買い取り査定サービスがある。ユーザーからの預かり荷物の中で、不要になった品物を取り出さずに1点ずつ査定。査定の見積り額を報告し、合意の際は買い取りする。査定費用は一切掛からず手軽にできる。査定対象は「ゲオ・セカンドストリート」で取り扱いのある品物となる。自身で処分する手間は省け、ゴミのロスにも繋がる。
 内山氏は「昨今は法人利用が増えています。小人数の企業や個人事業主はもちろん、中規模の企業まで波及していることが見られます。特に展示会に使用した社員お揃いのユニフォーム、アンケート用のバインダーやその他筆記用具、のぼりやバルーンなど、一時的な荷物の収納に最適です。また不動産業者と連携して提案もできます。マンション・アパートの入居者への提案、新規入居者の誘致に付加価値として提案してはいかがでしょうか」と語った。

安価でわかりやすい個人向け保管サービス
 日本パープル(東京都港区)は2017年から、個人向け物品保管サービス「AZUKEL」を開始。LINEを活用したサービス内容で、ユーザーからは手軽に利用できると好評だ。
 情報セキュリティ事業やデジタルアーカイブ事業を展開してきた日本パープルは、これら事業の知見を生かしてAZUKELを開始。AZUKELは個人ユーザー対象の宅配型トランクルームサービス。段ボール1箱から大型サイズの家電や家具まで、多様なサイズの荷物に対応できる。使用手順も簡単で、最初にLINEで会員登録。LINE上から集荷依頼や預けた荷物確認ができ、必要な時に必要な場所へ集荷・配送が可能。事前に発生する料金のシミュレーションもできる。
 安価で分かりやすい料金プランも特徴。段ボール1箱月額165円のレギュラーサイズ。衣類などの収納に適した1箱月額220円のアパレルサイズ。様々な荷物を収納可能な1箱月額330円のラージサイズがある。段ボール箱の購入代や郵送時の送料は無料。箱に入らない荷物もスペースプランで対応できる。サイズは0・1畳1100円から12畳まで用意した。また荷物は自社管理施設で、アイテムを1点ごとに写真撮影し採寸を実施。スマートフォンやパソコンで保管した荷物の管理ができるため、何を収納したかも把握しやすい。
 ストレージテック事業部GMの白石大輔氏は「昨今増えているのが引越し業者やマンション系デベロッパーとの協業・コラボレーションです。都市部の分譲・賃貸マンションは収納スペースが狭小かつ限られており、以前から荷物の保管場所が問題でした。近隣のトランクルームを利用する場合もありますが、自身で持ち運ぶ必要があります。収納後は『何を収納したのか』や『どこに置いたのか』と確認する手間が発生し、持ち出しの際にもトランクルームへ足を運ぶことになります。高層マンションが増えた昨今、これら問題を当社が手助けすることで負担を解消。かつ不動産業者にとっては携わるマンションの利便性向上、当サービスを生かした入居者の誘致にも効果的です」と語った。
 ユーザー目線でのサービス内容も好評を得ている。収納アイテムをLINEで1点ごとに確認でき、集荷や取り出しなどをトーク画面上から依頼できる。様々な世代で利用されているLINEを活用したからこそ、ユーザーにとっては障壁なく手軽に利用できる。また都内では車を持っていない・普段使用しない人も多い。車でしか運べない荷物や1人では持ち出しが大変な量を依頼できる。高層マンションなどでの持ち運び作業も丸々同社に依頼できることが、上手くニーズに合致した形だ。
 白石氏は「企業ではコロナ禍のテレワーク体制から、できる限り出社する体制に戻しつつあるようです。しかし、継続して在宅勤務を希望するワーカーも多く、その際居室内に執務空間をつくる。会社の荷物や資料置き場が必要になるケースもあるようです。室内を整理して、普段使用しない荷物を収納する需要は今後も継続してあると思っています。また今後も不動産業者との協業・コラボレーションは進むでしょう。自身での収納作業に手間や負担を感じる人が増えているため、その様なニーズに対応できるAZUKELを自社保有物件にも採用することで入居者確保・定着に貢献できると思います」と力説した。


オフィス移転での相性の良さが拍車に
 2社のサービス以外にもサマリーポケット、ミニクラ、ものくる、エアトランクなどがある。個人及び住居向けでのサービス拡大が普及した今、各社次なるターゲットは法人向け。企業ではペーパーレスの浸透や在庫を抱えない様子も増えているが、それでもかさばる物の置き場や収納問題は起きている。また賃貸オフィスの増床や拡大に前向きな企業は増えつつあるが、増床部分はコミュニケーションスペースといった社員の共創オフィスなどへの投資となっている。各宅配サービスの企業は移転などのタイミングで一時的に利用してもらうだけでなく、現在抱える収納問題の解決策としても一緒に提案していく方針だ。オフィス移転との相性の良さが普及拡大に繋がっている。




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