不動産トピックス

【今週号の最終面特集】研究開発施設の最新動向 東北大学と三井不動産の協働事例

2024.05.13 10:34

「東北大学サイエンスパーク構想」本格始動
社会課題解決と新産業創造を目指す「共創の場」構築
 国際卓越研究大学に唯一認定候補と選定された東北大学は、三井不動産(東京都中央区)とパートナーシップのもと、「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動した。4月26日には合同発表会が開催。多くのメディアが参加した。

キャンパス内の約4万㎡ サイエンスパークを整備
 世界トップレベルの研究開発施設が集積する東北大学の青葉山新キャンパス。現在キャンパス内の約4万㎡の敷地にサイエンスパークの整備を進めている。サイエンスパーク構想は同大学が有する人材・設備・制度等を広く社会に提供することで、産学連携により最先端の技術を社会実装させ、イノベーションの創出、社会課題解決と新産業創造を目指す構想。先端技術開発に挑戦する企業、企業と共創して学術研究を推進する大学・研究機関など、多彩なプレイヤーが集まり融合する「共創の場」を構築する。ちなみに同構想の新愛称に「MICHINOOK(ミチノーク)」を採用。「発見と創造は『未知ノ奥』にあり」という理念・コンセプトに由来する。ロゴマークの「0」の重なりは無限記号をイメージ。「MICHINOOK」の可能性が無限に広がっていくことを表している。
 東北大学サイエンスパーク構想の第1弾として、4月1日から「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」と産学連携拠点「青葉山ユニバース」の運用を開始。同じキャンパス内には世界最先端の次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」、世界トップレベルの半導体関連の研究開発拠点もある。これら研究施設と合わせて、東北大学は世界中から優秀な研究者・企業の集結を目指す。東北大学は同構想実現のため、三井不動産の培ってきた産学連携や新産業創造の知見・実績に着目。これら知見を活用すべく、三井不動産とパートナーシップを締結した。

新たな会員組織設立ミチノークコミュニティ
 今回のパートナーシップ及び双方の協働では、サイエンスパークに必要な機能や求められるコミュニティなど、「共創の場」の具体的なあるべき姿を検討していく。先端技術開発に挑戦する企業特有の多様かつ精緻な声を収集し、共創の場構築に反映。国内外の多くのステークホルダーを呼び込むことで、コミュニティの拡大と共創の加速、学術領域の垣根を超えた交流・連携を促す。また大学や企業等の間のネットワーキングに留まらず、産学連携を通してイノベーション創出のコミュニティを形成・運営していく。
 会員組織「MICHINOOKコミュニティ」も新設した。MICHINOOKコミュニティは、単一の学術領域に留まらず、同大学が世界トップレベルの研究者や研究環境を有する「半導体・量子」、「グリーン・宇宙」、「ライフサイエンス」、「材料科学」など、複数の学術領域を対象としたコミュニティ。領域ごとに大学と企業等の交流・連携を促し、イノベーション創出を目指す。加えて複数の学術領域の垣根を越えた共創活動も促す。対象の学術領域は、今後順次拡大の予定。また最新の研究動向や社会実装事例などを広く情報共有しあう「オープンな交流機会」と、個社ごとのニーズに合わせて限られたメンバーのみで共創をおこなう「クローズドな交流機会」も展開していく。双方を適切に組み合わせることで、企業としての競争優位性にも配慮。イノベーション創出の環境にも繋げていく。
 会員向けのサービスとしては交流・連携機会の提供をはじめ、東北大学に関する情報提供、会員企業による情報発信、東北大学内の「場」の提供などを想定。交流・連携機会の提供では、年間を通してライフサイエンスや半導体、宇宙などの領域ごとに最新の研究動向を紹介するセミナーや複数領域を横断したシンポジウムを開催。東北大学の様々な分野の研究者や先端技術開発に挑戦する企業同士のオープンな交流機会を提供する。有料会員向けには、有料会員限定の集まりや個社ごとのニーズに合わせた研究者・学生とのマッチング機会、会員企業同士のマッチング機会など、クローズドな交流機会も提供していく。

優良の特別会員ABと無料の個人会員及び学生会員
 東北大学に関する情報提供では、企業向けの各種制度やイベント、研究者紹介等の情報を会員向けに定期的に発信。更に大学が有する知財や図書データへアクセスできる環境も整備予定だ。また会員企業による情報発信では、各社が実施するイベントやシンポジウム等の情報をMICHINOOKコミュニティの媒体やイベントを通して発信が可能に。会員各社の取り組みを広く認知でき、地元企業にも情報を発信してもらうことで、ローカルからグローバルまで視野に入れた共創活動を促す。「場」の提供では全キャンパスをフィールドとして、大学と会員企業、会員企業同士の共創活動を促すために、様々な会議室やコミュニティスペース、ワークスペース、附属図書館等を会員企業向けに開放する。
 会員制度は入会金・年会費が有料となる「特別会員A・B」と、入会金・年会費とも無料の「個人会員」、「学生会員」を設ける。特別会員Aは、従業員301名以上の企業。特別会員Bは、従業員300名以下の企業と非営利団体等が対象になる。特別会員は前述の交流連携イベント、東北大学の情報提供、会員企業による情報発信、「場」の提供が利用できる。一方個人会員・学生会員は、交流連携イベントと東北大学の情報提供の一部が利用できる。
 4月26日に開催された合同発表会では、三井不動産の植田俊社長が登壇。「いま我が国では、産学連携が生み出す先端技術領域におけるイノベーションに大きな期待が寄せられています。デフレ脱却の兆しが見られ、『失われた30年』からの歴史的転換点でもあるこのタイミングで、産学連携の象徴的な取り組みである『東北大学サイエンスパーク構想』を共に推進できることに、運命的なものを感じています。これからの東北大学と三井不動産の協働にぜひご期待ください」と語った。三井不動産は、産業界の様々なプレイヤーと設立したライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(略称LINK―J)やクロスユー、金融機関やベンチャーキャピタル、公的機関、アカデミアなどの様々な企業・団体と連携して、同活動を推進していく。継続的に連携パートナーを増やしていくことで、グローバル規模で「共創の場」を拡大していく想定だ。

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