不動産トピックス

クローズアップ AI編

2024.05.20 10:56

 多方面で進化を続けている不動産テック。その中でもAI(人工知能)の領域は学習機能が日々ブラッシュアップされており、その精度は著しく向上している。専門性が高いとされる不動産業界でもAIの活用はまだまだ広がりそうだ。

リセ AIが契約書の書面内容をチェック 不動産業界特化パッケージを発表
 リセ(東京都千代田区)は、AIが契約書の書面内容をチェックして抜け漏れの指摘や代替文の提示などを行うクラウドサービス「LeCHECK(リチェック)」について、不動産業界に特化した「プロフェッショナルプラン」の提供を開始した。
 「LeCHECK」は、各分野に精通した専門弁護士のノウハウをAIが学習し、企業間の契約や取引の場面などで用いられる契約書をクラウド上に読み込ませることで、条文の抜け漏れや利用者にとって不利な内容の条項を指摘。利用者の立場に応じた代替案を提示するというもの。チェック箇所や修正例を分かりやすく提示することで、専任弁護士が不足しリーガルチェックが不十分になりがちな中小企業も導入しやすい商品設計が大きな特徴となっている。リセは今年1月、契約書内容に専門性が求められる業界向けとして、各業界に特化した契約書のレビューを行うことが可能な「業界特化パッケージ」を搭載した「プロフェッショナルプラン」の提供を開始。第1弾では「化学メーカー業界特化パッケージ」を発表し、今回の不動産業界向けは第2弾となる。
 不動産業界では売買や賃貸借など、様々な場面で契約書を取り交わす機会の多い業種。中には業界特有の専門用語や条項が記載されることもあり、契約後のリスクを最小限にするには宅地建物取引業法をはじめとする不動産関連の法令への深い知識と経験が不可欠である。
 「LeCHECK」の「不動産業界特化パッケージ」は、望月圭介法律事務所の望月圭介弁護士をはじめ、国内最大規模の法律事務所で30年以上にわたって不動産法の専門家として活躍してきた弁護士など、複数の専門弁護士が監修を担当。不動産の売買や賃貸借の場面で用いる契約書について、クラウド上に読み込ませることでAIが瞬時にリーガルチェックを実施し、不動産の売り手・買い手、貸主・借主といった利用者の立場に応じた修正点の指摘や例文の提示などを行う。
 リセの藤田美樹代表取締役は「不動産業界は企業の規模に関わらず、取引額や契約書の数が多いことが特徴の一つです。また契約書の内容は専門性が高く、弁護士のノウハウがより強く生かされる業界です。一方で不動産法に明るい人材の採用は容易ではなく、業務の効率化が課題となっていました。AIを活用したサービスは多種多様ですが、その中でもリーガルテックの領域では高い精度が求められます。『LeCHECK プロフェッショナルプランの不動産業界特化パッケージ』は不動産法の専門家として活躍している弁護士の方々に監修いただき、専門性と精度が高い契約書レビューを実現します」と話す。同社は不動産会社への訴求を積極的に展開し、まずは100社程度の導入数を目標にするとともに、他業界にも特化したパッケージの開発にも取り組むとしている。

DATAFLUCT 国分グループと連携し酒類・食品の自動発注システム構築
 DATAFLUCT(東京都渋谷区)は、国分グループ本社(東京都中央区)と連携し、国分グループの物流拠点に同社の需要予測AIサービス「Perswell(パースウェル)」を導入。酒類・食品の自動発注システムを実現している。
 酒類食品卸売業の大手企業である国分グループは、国内外の約1万の仕入先から約60万アイテムの商品を仕入れ、約3万5000軒の得意先に商品を届けるため、全国約300拠点の物流センターによって食のインフラを支えている。発注・在庫管理の現場では多様なニーズに安定的に低コストで応える必要がある。具体的には、人手不足によるメーカーリードタイム延長・入荷頻度減などの状況でも欠品を防ぎ、サプライチェーン全体を意識し適正在庫をキープし続けていく必要がある。また、新商品や特売、定番商品など、さまざまな商品の発注・在庫管理対応も求められる。
 同グループでは、以前は過去の実績や経験値による需要予測をもとにこれらの業務を行っており、予測精度の問題で在庫過多や欠品による販売機会の損失やイレギュラーな調達業務が発生するという課題があった。この課題解決のために、同グループは「定番商品の発注」における自動発注システムの実現を目指してきた。このシステムでは、得意先からの未来の受注を「Perswell」で予測し、国分グループの基幹システムに情報を連携、予測結果に現在の在庫数や欠品防止などの調整を加えることで、高精度の予測に基づく自動予測システムが実現した。
 一般的なAI活用では、学習済みのモデルでしばらく予測を続け、一定期間が経過したら再学習する形がとられているが、酒類食品卸売業では1日ごとに状況が大きく変化する。今回の「Perswell」活用では、「需要動向に影響を与える適切な外部データの活用」、「汎用的な1つのモデルで全商品を予測するのではなく、より細かい粒度でモデルを構築」などの工夫を行うことにより、新しい情報を最大限取り込み、需要予測精度を導入前よりも約10%向上させている。

シーラテクノロジーズグループ 不動産賃貸仲介アプリ「ietty」会員40万人突破
 シーラテクノロジーズ(東京都渋谷区)の完全子会社であるシーラ(東京都渋谷区)が運営する、AIを活用したオンライン不動産賃貸仲介アプリ「ietty(イエッティ)」の会員登録者数が40万人を突破した。
 新型コロナウイルスの感染拡大後、不動産仲介の現場ではオンライン接客への需要が急速に高まっている。そうした中、「ietty」は2024年3月に会員登録者数が30万人を突破し、5月8日には40万人を突破した。同アプリが提供するオンライン接客サービスは、スマートフォンで物件案内から内見、賃貸契約までワンストップで行うことができ、賃貸仲介のプロセスを効率化し、DX化を実現する。ユーザーはインターネット上に公開されていない物件も見つけることができるため、自らが物件を検索し、スマートフォンやパソコンから部屋の内見を行うことが可能である。これにより、ユーザーは時間と労力を節約しながら理想の物件を探すことができる。




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