不動産トピックス

【週刊不動産経営6/24号・今週の最終面特集】不動産の価値を引き出すリニューアル事例

2024.06.24 10:51

昭和の雰囲気から高級感ある空間へ一新
築年を感じさせない共用部を実現
 不動産の価値は築年数が経過するほどに低下していくのが一般的。ただし効果的な改修工事を行うことで新築にはない深みのある建物の魅力を引き出すこともできる。住宅領域では未利用の空き家が社会問題化しているだけに、収益装置としての不動産の再生の余地を検討していきたいところだ。

築古物件の再生に強み テナント居ながら改修
 オフィスビル・商業ビル・レジデンス等の不動産賃貸や築古物件の再生・バリューアップを手掛けている北辰不動産(東京都港区)は、東京・銀座に保有する「第23ポールスタービル」の共用部改修工事を実施した。施工はグループ会社のアドバンス・シティ・プランニング(東京都港区)が担当した。
 建物が立地する銀座8丁目はバー・クラブなどの飲食店が集中するエリア。同ビルは1968年の竣工で、建物規模は地上7階地下1階。延床面積は2402・63㎡。多数の飲食店が入居していることから、テナントへの影響を最小限にするため、工事はテナントが営業を休止する大型連休期間などを活用して段階的に実施された。北辰不動産アセットマネジメント部の小玉哲也部長は「長い時間をかけてのリニューアルとなりますが、結果的にはテナントに喜んで頂ける取り組みになったと考えております」と述べる。工事が行われたのは共用の廊下ならびにエレベーターホールである。
 共用の廊下は昭和レトロなスナックが並ぶ雰囲気であったが、折り上げ天井を造作し天井の高さに動きを持たせると同時に、コファー照明で品のある天井廻りを演出。また、エレベーターホール、廊下の巾木、天井廻り縁についてはマットなゴールド塗装を施したサンメントを設置し、床、天井取合いの直線性を整え、高級感を出しつつ落ち着いた雰囲気に仕上げている。
 エントランスから各店舗にかけてのアプローチ部には高さ1850mmの古い防火扉が設置されており、奥を見通しにくく閉鎖的な印象を与えていたが、防火扉上部の下がり壁を一部撤去して高さのある防火扉に変更したことで、開放感のある空間をつくることができた。
 またエレベーターホールは吹付タイル仕上げの壁面でレトロな印象であったが、石膏ボードを張り、仕上げとして来館者のファーストインプレッションに刻み込む印象的な皮調クロスを採用。さらに照度を少し低減させることで、より深みを持たせた空間を演出。奥へ続く廊下は意匠として直線を通した下がり天井を造作。その下がり天井から優しい光を落とすことで来館者が気持ちよく利用できる空間を実現した。

田園都市の地下5駅 サステナブルな駅目指す
 東急(東京都渋谷区)ならびに東急電鉄(東京都渋谷区)が推進している東急田園都市線の地下区間5駅のリニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」。そのうちの1駅である「用賀」駅構内の地下1階コンコースにおいて、駅の未活用空間を使い「駅とまち、まちと人、人と人をつなぐ場所」をコンセプトにした地域の情報発信・交流スペースとして「GUG Lab.(ジーユージーラボ)」が7月17日にオープンする。
 このリニューアルプロジェクトは、開業から40年以上が経過した池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀の地下5駅をリニューアルするもので、脱炭素・循環型社会への貢献および地域に開かれたサステナブルな地下駅を目指している。第1弾の「駒沢大学」駅では駅設備・内外装・トイレの改修や店舗の新設など、第2弾の「桜新町」駅では駅設備・内外装の改修などが行われている。「GUG Lab.」はプロジェクト名称の頭文字と「LABORATORY」を組み合わせたもので、「用賀」駅の地下1階コンコースに約15㎡のスペースを設け、地域の情報発信や魅力を発見できる展示、駅とまちについて考えるトークイベントなど、様々なイベントが企画される。施設は「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」や「たまプラーザ テラス」を運営する東急モールズデベロップメント(東京都渋谷区)が企画・運営を担当する。
 7月17日のオープンに合わせた第1弾イベントでは、池尻大橋エリアで活動するクリエイターや個性的な商店などがまちの魅力を発信する「まちのおすすめスポット展」や、地域で活動するカメラマンがまちの情景を描く「池尻大橋エリア 風景写真展」が開催される。

増加傾向の相続空き家 初期負担0円でリノベ可能
 リノベーション協議会会長の内山博文氏が代表を務めるJapan. asset management(東京都品川区)は、運営する空き家活用のプラットフォーム「空き家リノベラボ」において国土交通省の「空き家対策モデル事業」採択を受け、空き家・相続不動産に関する相談から調査、初回提案まで無料の個別相談サービスを強化。空き家オーナー向けのウェブサイトとしてリニューアル公開した。
 総務省統計局の令和5年「住宅・土地統計調査」の速報集計によると、2023年10月1日時点の国内の空き家の数は、調査開始以来最多の900万戸にのぼっている。1993年時点の448万戸から30年でおよそ2倍に増加し、空き家率も過去最高の13・8%に達している。また空き家の中でも、賃貸・売却用や二次的住宅(別宅など)でない空き家の数は約385万戸と、1993年時点の149万戸から30年間で2・5倍に増加している。国土交通省が発表した令和元年「空き家所有者実態調査」によれば、空き家の半数以上にあたる54・6%が相続による取得で、いわゆる「相続空き家」への対応が求められている。
 「空き家リノベラボ」は、不動産・建築・金融の多角的な視点から空き家を活用する最適解を無料で提案。個々の悩みや不動産の状況に応じた空き家の課題解決をサポートするプラットフォームである。今回の「空き家対策モデル事業」採択を受け、同社は公式ウェブサイトのリニューアルを実施するとともに、空き家・相続不動産対策の手引きや空き家活用を検討する上で有益な情報をまとめた公式パンフレットを作成。さらに既存のサービスである「かりあげ+0円リノベ」の無料相談窓口の強化、空き家オーナーに代わり事業者が負担する改修資金調達の仕組み構築などサービス体制の強化を図るとしている。
 「かりあげ+0円リノベ」は、「空き家リノベラボ」の連携事業者が空き家を借り上げ、リフォーム・リノベーションを行うもので、空き家オーナーの工事負担は0円から。新たな使い方をデザインし、不動産を再活用することで、オーナーには固定賃料が支払われる仕組みである。

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