不動産トピックス

【7/8号・今週の最終面特集】新ビルめぐり 渋谷アクシュ

2024.07.08 11:19

渋谷・青山をつなぎ賑わいを創出する新施設 オフィスフロアは満室で開業迎える
再開発が続く「渋谷」駅周辺 2024年は新たなステージへ
 日本のみならず海外からも多くの人を呼び寄せる渋谷では、100年に1度ともいわれる大規模再開発が「渋谷」駅周辺において展開されている。近年ではオフィス供給量が増え、IT関連企業やベンチャー・スタートアップの集積地としての地位も確立している渋谷で、新たな再開発ビル「渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)」が開業した。本物件は渋谷から青山方面へと続く東口エリアに位置しており、人々が集い、地域と地域をつなぐ役割を担うことになる。

飲食機能の充実図り就業人口増の需要に対応
 「渋谷二丁目17地区第一種市街地再開発事業」として開発された「渋谷アクシュ」は、2015年に再開発協議会が設立され、17年の準備組合設立を経て、19年に都市計画が決定。21年より新築工事がスタートし、本年6月に竣工を迎えた。従前は4棟の既存ビルが立地し、再開発組合は地権者に東急(東京都渋谷区)が事業協力者として加わる形で計画が進められた。また計画地は「渋谷ヒカリエ」に隣接する青山通り沿いで、周辺のオフィスビルで働くオフィスワーカーや青山方面に向かう学生などで一定の通行量はあるものの、幹線道路に囲まれた立地で円滑な回遊が妨げられていた。計画地周辺は人々が滞留し、賑わいを生み出すスポットが不足しているという課題もあったことから、本計画は「TSUNAGI―BA」を施設コンセプトに設定。駅周辺の商業店舗が集中するエリアと青山方面の文教エリアとのつながりを意識した設計がなされた。施設名の「アクシュ(AXSH)」には「青山(A)」と「渋谷(SH)」をつなぐ(X)、賑わいの拠点としての期待が込められている。
 「渋谷アクシュ」は、建物規模が地上23階地下3階、敷地面積約3462㎡、延床面積約4万4543㎡。地上5階から23階の19層がオフィスフロアとなっており、低層部にはエリア一帯の回遊性向上に資する商業店舗15店舗が出店する。オフィスフロアは基準階面積が約1325㎡で、3階のオフィスエントランスは植栽をふんだんに配置することで緑あふれる雰囲気を演出している。またオフィスエントランスにはカジュアルなミーティングや作業ができるスペースを設け、階段型のユニークスペース「階段室(たまりば)」は会議・セミナー・イベント等に利用可能なレンタルスペースとなっている。東急の不動産運用事業部、事業推進第三グループ主査の亀田麻衣氏は「本物件のオフィスフロアは開業前に100%稼働を達成しました。入居するのはIT、人材派遣、不動産など多種多様で、新築の大型物件において稼働率100%で開業を迎えるのは、近年では非常に珍しく、本物件を高くご評価いただいた結果であると認識しています」と話す。
 低層部の商業フロアは人々が集いやすい施設設計と店舗構成としながらも、周辺との回遊性も考慮している。「渋谷」駅からの動線は「渋谷ヒカリエ」を経由してデッキレベルでアクセスが可能。またデッキを通じて青山通りを挟んだ向かいに位置する「渋谷クロスタワー」にも到達することができる。敷地内には「渋谷」駅側と青山側でそれぞれ広場空間を整備した。「渋谷」駅側に設けられた「SHIBUスポット」は巨大なシースルービジョンを設置して季節感を演出する映像など様々な情報発信が行われ、広場部分ではキッチンカーの出店やイベントスペースとしての活用など、人々の賑わいを創出する空間として機能する。一方青山側に設けられた「AOスポット」では、渋谷を拠点に活動する現代アートギャラリー「NANZUKA」によるパブリックアートプロジェクトを展開。アート作品を身近に感じられる機会を創出する。このパブリックアートプロジェクトは定期的に展示物の転換が行われる予定で、施設の開業に合わせて「GINZA SIX」の中央吹き抜け空間にインスタレーションを展示したことでも知られる、フランス人アーティストのジャン・ジュリアン氏の作品「The Tank」が展示されている。
 商業店舗は新業態や初出店の店舗を含む15テナントが順次オープンする。和食からハワイアン、イタリアン、中華と、幅広い属性の来館者を意識したバリエーションに富んだ店舗構成が特徴だ。東急の都市開発本部渋谷開発事業部 プロジェクト推進第二グループ担当部長の田邊秀治氏は「『渋谷』駅周辺ではオフィス床の供給が増えるにつれて、日常利用できるカフェが不足気味になっていました。そこで本物件ではコンセプトの異なるカフェが複数店舗出店することで、エリアに不足していた飲食機能を補完いたします」と話す。
 東急グループでは、文化・エンターテインメント性が高い渋谷の街の歴史を踏まえ、「働く」・「遊ぶ」・「暮らす」が融合した「渋谷型都市ライフ」をまちづくりビジョンに掲げている。中でも「働く」の領域においては、多様性があり自分らしいスタイルで仕事ができる風土が醸成されていることからスタートアップを中心とした企業層からの渋谷の人気は非常に高く、三軒茶屋・中目黒・代官山・恵比寿といった人気の住宅エリアに囲まれ、職住近接のライフスタイルを実現できる環境が整っている点も、渋谷の人気を底支えしている要因となっている。東急では渋谷エリアのオフィスブランディング「Playwork」を掲げ、同社保有物件に入居するテナント向けに情報・サービスを提供するスマートフォンアプリの運用を開始。飲食店利用時の割引サービスが提供されるなど、渋谷で働くことの更なる魅力向上に努めている。
 駅周辺の再開発が着実に進む渋谷エリア。本年は「渋谷アクシュ」ならびに「渋谷サクラステージ」が開業。また、西口地下歩道の供用開始によって歩行者ネットワークの拡充が実現し、JR「渋谷」駅新南改札の移転開業に伴って駅東西の行き来がこれまで以上にスムーズになる。前出の田邊氏は「今後も渋谷エリア全体で約5000億円の投資を計画し、渋谷の街を盛り上げていきたいと考えております」と述べており、独自の魅力を持った渋谷のこれからの発展にも目が離せない。


<物件概要> 名称 渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)
所在地 東京都渋谷区渋谷2-17-1
敷地面積 約3462㎡
延床面積 約4万4543㎡
規模 地上23階地下3階
事業主 渋谷二丁目17地区第一種市街地再開発組合(構成員:塩野義製薬、南塚産業、NANZUKA、東宝、太陽生命保険、東急)
施工 竹中工務店
竣工 2024年6月1日




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