不動産トピックス

【7/15号・今週の最終面特集】自社物件を生かした魅力づくり

2024.07.15 10:32

名古屋市内を中心にビル屋上活用のイベント 周辺地域のブランド化や魅力形成にも貢献
 建物の屋上を活用して、イベントや街の集客に繋げる取り組みが名古屋市内を中心に開催されている。大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワーク(名古屋市中区)は昨年10月に地元の空調施工会社・大冷工業(名古屋市東区)とコラボして、本社ビルの屋上を活用した「ODORIBA」を開催した。

交流拠点を都市に形成 文化等発信の場づくり
 「ODORIBA」は名古屋文化の祭典「やっとかめ文化祭 DOORS」から派生した新たな試み。「都市を、耕す。あいだで、遊ぶ。」がコンセプト。「庭」となる交流の拠点を都市のスキマにつくり、新しい世代の文化・カルチャーを創造・発信する場づくりを目指して開催した。イベントはPERFORMANCE、MARKET、SCHOOLの3つで構成される。
 PERFORMANCEは音と舞を愉しむ企画。名古屋の歴史が紡いできた伝統芸能のひとつ「狂言」や、現代音楽のパフォーマンスを提供した。空間設計された舞台で、ライブ、DJなども行った。またMARKETでは「野良茶」、「野良バー」、「市庭(いちば)」の3種類を企画。野良茶では、お茶と和菓子を楽しむことができる2店舗が都内から出店。野良バーでは、創作フレンチやカレー店が出店した。更に市庭では「文化は市庭から生まれる…」といういわれをテーマに、2つの出店で文化の興りを表現。三重県で農業に挑戦している人や名古屋内外で展開する架空の本屋・美鶴堂が出店した。学び場「ODORIBA SCHOOL」では、街を耕すヒントを見つけることを目的にクロストークを開催。東京・高円寺で人気を博す銭湯・小杉湯、空き家再生活動を行うLOOK BOOKなどが登壇した。

 仕掛け人は、大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワークで理事を務める山田卓哉氏のチーム。山田氏は「当初100~200名ほどの参加者を見込んでいましたが、当日は延べ人数で500~600名が集まりました。イベントの仕掛けが上手くいき、参加したインターン生や裏方として働くスタッフ、また取引先やその他参加者からの反響も良かったです。一方屋上のスペースや屋上までの導線も限られているため、次回開催の課題も見つかったイベントになりました」と語った。
 大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワークは社会教育やまちづくりの推進を図る活動等を開催しており、企画する催しに参加する社会人や学生も多い。ところが、イベントを企画するにあたって開催場所が問題となる。様々なアイディアはあるが開催場所の確保に苦慮しており、賛同・協力してくれる企業も限られていた。
 一方地元の空調施工会社・大冷工業はインターンシップ制度を採用しており、優秀なインターン生が毎年参加している。彼ら若年層に名古屋の良さや魅力をもっと知ってもらい、かつ自社の採用にも繋げていきたい思いがあった。大冷工業の大場章晴社長は「10年ほど前に当社ビルの屋上で社員同士の親睦も兼ねた社内イベントを開催したことがあります。当時はまだ社内向けのイベントでしたが、新たに同じ熱量のイベントができないものか、また周辺地域の方々や日頃お世話になっている企業などにも声を掛け、自社の認知度向上や街の盛り上げにも繋げたいとの思いがありました」と語った。

 双方の思いをマッチングさせ、成功へ導いた協力者が青空ルネサンス。青空ルネサンスは、普段使用されていない・使用頻度の低いビル屋上を活用した屋外イベントを企画・実施するプロジェクト。ビル屋上の活用に伴い、街に新たな賑わいや魅力をつくり出すことを目的としている。2020年から開始。これまでに10回ものイベントを開催してきた。イベント限定の店舗・ポップアップストア・カフェ等を誘致し出店させる、ビル内の一部スペースや壁面等を使用しての写真展を開催するなど、普段とは違った非日常の体験を企画・提供することで、改めて同地の良さや魅力を参加者などに気付かせることを目指す。加えて観光資源の少ない名古屋エリアの魅力形成や魅力発信にも期待されている。高額な投資費用は必要なく、集客・告知は主にクチコミやSNS。開催を地道に継続してきたことで賛同者も増え、現在ではリピーターや反響も大きくなってきた。
 青空ルネサンスの中心メンバーは、空間デザインや建築デザインなどを手掛けるBETTER CITY(名古屋市千種区)代表取締役の篠元貴之氏と、派遣事業や建設業などを展開するNEXUS(名古屋市中区)代表取締役の後藤千丈氏。篠元氏は「単なる屋上活用の飲み会や一時的なイベントではなく、街に人を引き付ける、定着させて愛着も持たせることに繋がる取り組みです。定期的に開催することで『名古屋では何か面白いことを行っている』との気付きになり、これが後に当エリアの新たな賑わいや魅力になると思っています」と語った。
 後藤氏は「当活動を名古屋市内のデパートやその他物件の屋上活用にも広げていきたいと思います。名古屋に限らず別のエリアでも展開していき、屋上を活用することで見つかる新たな魅力をもっと多くの人に気付いて欲しいと思います。また開催を継続することで、ビルオーナーから見れば不動産価値の向上にも期待できます。開催場所のビルはもちろん、周辺地域のブランド化や魅力形成も進むでしょう。その様な視点を持って協力してくれるパートナーを募っています」と語った。大冷工業と青空ルネサンスはこれまで2度のコラボ開催を成功させており、前述の経緯から大冷工業への紹介に結びついた。
 会場となった「大冷工業本社ビル」は、地下鉄東山線「新栄町」駅から徒歩5分の大通沿いに立地。近隣の物件よりも高く、特に大通りに沿うような形であり、「名古屋」駅方面の視界も開けている。眺望の良さも生かし、建屋の屋上を活用した一大イベントを成功させた大冷工業、大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワーク、青空ルネサンスによる3者。今後も積極的に名古屋の魅力づくりと街の発展に寄与していく姿勢だ。

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