不動産トピックス

【7/22号・今週の最終面特集】商業施設 最新事例 渋谷サクラステージ

2024.07.22 10:58

人々の交流と文化発信の新拠点が誕生 駅周辺再開発のラストピースがいよいよ街びらき
JR新改札の使用開始で広域の回遊性向上に期待
 「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」として開発が進められてきた「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が、昨年11月末に竣工。そして今月25日には、商業エリアの店舗が一斉オープンを迎え、街びらきイベントの開催も予定されている。一斉オープンに先行して今月21日にはJR「渋谷」駅の新しい新南改札が使用開始となり、地域の長年の課題となっていた駅からのアクセス性が飛躍的に向上した。

面積約1万5200㎡ 37テナント一斉オープン
 「渋谷サクラステージ」はJR「渋谷」駅南西の桜丘町に位置し、開発施工面積は約2・6ha。敷地内はA街区(SHIBUYAサイド)とB街区(SAKURAサイド)に分かれており、A街区の超高層複合ビル「SHIBUYAタワー」の建物規模は地上39階地下4階、高さは約179m。「渋谷」駅周辺では「渋谷ヒカリエ」や「渋谷ストリーム」などと同程度の高さとなる。再開発は1998年に旧準備組合の設立に始まり、2014年に都市計画決定、2019年に建築工事が着工、その後昨年11月に竣工を迎えた。
 また今回の再開発では新築物件の建設による都市機能の強化のほか、交通基盤の拡充により他街区との回遊性の強化、地形の高低差および鉄道と国道246号による地域の分断を解消とアクセスの向上を大きな目的としている。桜丘町は「渋谷」駅に近接していながら、駅に到達するまでに幹線道路を歩道橋で渡らなければならないロケーションとなっていた。本プロジェクトをきっかけに従来の歩道橋のほか地下歩道やJR線路をまたぐ東西自由通路の整備が行われ、周辺街区とはバリアフリーでつながることとなる。
 今月18日に行われた記者説明会に登壇した東急不動産(東京都渋谷区)の星野浩明社長は「『渋谷サクラステージ』の誕生で桜丘町の回遊性は高まり、本施設周辺の人流(2024年3月時点)は着工前の2019年3月と比較すると143%に増加しました。最も多くの人が行き来する18~19時の人流は1カ月累計で10万人以上増加。今後もこの数値は増加するものと思われます」と話す。
 東急グループでは新しい社会のニーズに適応したまちづくりを進めるため、まちづくり戦略「Greater SHIBUYA2・0」を策定。都市開発やまちづくりを通じて「働く」、「遊ぶ」、「暮らす」の要素を融合させた「渋谷型都市ライフの提案」を目指している。本プロジェクトを担当した東急不動産の都市事業ユニット渋谷事業本部 執行役員の黒川泰宏本部長は「リアルと溶け合うデジタルインフラの整備で、ここでしか体験できない価値を提供します」と述べる。具体的には電通(東京都港区)との協業によるAR体験型メディアを予定。テナントや広告主は「渋谷サクラステージ」を媒介して来街者に対しAR体験を通じた広告価値の提供を図る。来街者は街区独自の魅力を、AR体験を通して享受することができ、テナントや広告主はマーケティングデータへの還元に役立てることができるという仕組みだ。また、東急不動産では渋谷で働く人々を職場やコミュニティーを超えて気軽につながることを目的としたエリア特化型アプリ「MABLs(マブルス)」を運営している。「渋谷サクラステージ」でもこのアプリを活用した店舗のお得情報の発信や、利用者同士の交流イベントの企画などが積極的に行われる予定である。
 「渋谷サクラステージ」の商業エリアは地下2階から地上5階までの7層で構成され、今月25日にオープンする商業店舗は37テナント。総売場面積は約1万5200㎡で、飲食店・カフェやスーパーマーケット、雑貨店などを中心に出店し、普段使いから趣味を楽しむ店舗まで、幅広いラインアップとなっている。中でも注目はSHIBUYAサイドの4階に広がる、カルチャーとフードを融合させたフロア「サクヨン」である。
 渋谷エリアで最大級の書店「TSUTAYA BOOKSTORE」や渋谷で4店舗目となるシェアラウンジ「SHARE LOUNGE」、アートコミュニティスペース「re―search」がオープン。商店街をイメージしたフードホール「FOOD MET」では17の飲食店が出店し、多種多様な人々が集う交流の場を提供する。このほか、「遊び」をテーマとしたクリエイション拠点「404 Not Found」では、ゲーム・アート・音楽など様々なカルチャーで活躍するインディークリエイターの聖地を目指し、展示イベントやワークショップなどが開催され、隣接する「404 Kitchen」ではポップアップレストランが出店しこれまで店舗を持っていなかった個人やスタートアップ店舗を支援する。
 渋谷の新たな賑わい拠点の登場に合わせ、都市インフラの整備も実施される。1日平均約30万人が利用するJR「渋谷」駅では今月21日、新南改札を約200m移転し新たに使用を開始した。これによって駅と「渋谷サクラステージ」が直結するだけでなく、桜丘町地域の長年の悲願であった「渋谷」駅とのアクセス性が大幅に向上することとなった。以前の新南改札は埼京線ホームのみに接続していたが、移転後の新南改札は山手線ホーム・埼京線ホームどちらにも下りられる構造で、乗客の利便性や駅を中心とした街の回遊性はこれまで以上に高まると期待されている。
 「渋谷サクラステージ」の商業エリアが一斉オープンすることで、星野社長は「渋谷らしい多様性にあふれた街を実現していきたい」と述べており、渋谷では多種多様な人々のあらゆるシーンに対応した地域の魅力づくりが今後も加速する。

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