不動産トピックス

【9/2号・今週の最終面特集】次世代のワークスタイル紹介

2024.09.02 10:45

オフィス回帰ニーズに対応した空間提供
体内リズムに合わせて照明が自動変化 物件の付加価値高める新技術も導入
 企業は定型化されたオフィスづくりから、従業員のライフスタイルの多様化に合わせたフレキシブルなオフィス空間をつくりあげることが求められるようになった。加えて取り組みが重視されるようになっているのが業務のDX化・効率化。企業の成長をサポートする最新のオフィスづくりをみていく。

増床で3部屋新設 10名以上の需要吸収
 NTT都市開発(東京都千代田区)では、「はたらくって、たのしい」をコンセプトに、自分らしいワークスタイルやライフスタイルの実現をサポートするシェアスペース事業「LIFORK」を展開している。今回、千代田区外神田の「秋葉原UDX」で2018年4月より運営している「LIFORK秋葉原」において、ワーカーの利便性を高め、チーム力向上やコミュニケーションの活性化といった「集まることの価値」をさらに高める新たなオフィス空間の提供を開始した。
 「LIFORK秋葉原」は「秋葉原UDX」の4階に所在し、シェアオフィスならびにレンタルルームで構成される。コロナ禍の収束とともにオフィスへの回帰傾向が強まり、スタートアップ企業を中心に、より大人数用の貸室ニーズが高まっていると同社は分析。「LIFORK秋葉原」を増床し、シェアオフィス内に完全個室の10名用2部屋と、12名用1部屋を新設した。各部屋は個別空調に加え、照明には「LIFORK」全施設で初となる遠藤照明(大阪市中央区)の次世代調光調色シリーズ「Synca(シンカ)」を導入している。この「Synca」は1日の体内リズムに合わせて照明の明るさや光の色合いを自動で調整するというもので、今回新設した各部屋は天窓のような照明がオフィス空間に自然な光をもたらす。また各部屋からは大きな窓越しに往来する電車を眺めることができ、ワーカーの気分転換や日々のルーティンに適度な刺激を与えるとしている。「LIFORK秋葉原」のシェアオフィスは「秋葉原UDX」の住所利用や登記が可能となっており、同社によればアドレス性も人気の背景にあるとのこと。新設する3部屋のうち既に1部屋については入居が内定しているという。
 このほか、「秋葉原UDX」の付加価値を高める取り組みとして、リコー(東京都大田区)が開発した次世代会議空間「RICOH PRISM(リコー プリズム)」が「LIFORK秋葉原」内に導入されることとなった。
 コロナ禍を通じてハイブリッドワークなどの自由な働き方が主流となる中、オフィスに出社する価値・目的として「チーム力や創造性を高めるコミュニケーションの活性化」が求められている。今回導入される「RICOH PRISM」は、チームの創造性を高めるための次世代会議空間。室内は四方の壁がスクリーンとなり、360度を映像で囲まれた空間を構築。映像や光、音といった五感に働きかける様々な空間演出を行い、創造性を引き出す。「RICOH PRISM」では目的に応じた様々なアプリケーションが用意されており、生成AIを活用したアイディア出しの場面で活用できる「KABEUCHI(カベウチ)」は、壁一面に表示される3Dキャラクターとの会話を通じて、アイディアの創出から深化、整理を行うことができる。
 先月28日に開催された内覧会では、「KABEUCHI」のデモンストレーションが披露された。リコーの未来デザインセンター、はたらく歓び価値創造室の花谷愼也氏は「会議は、人に依存した既存の会議、利用シーンを限定して適切な会議を行う場面限定誘導会議、ファシリテーターが会議の方向性を導くフィードフォワード会議の、3つのレベルがあると考えています。『RICOH PRISM』は、このうち場面限定誘導会議にご活用頂ける空間です。例えば『KABEUCHI』は、1人での利用の場合はアイディア出しのサポートに、複数人での利用の場合はお互いのアイディアの深堀りや世代間で異なるアイディアの検討などに役立てることができます」と話す。
 アプリケーションを起動すると、まずはじめに検討する議題に関してのヒアリングが行われ、その後、3Dキャラクターとの対話がスタート。キャラクターは柔らかい口調が特徴の女性キャラクターと、力強く対話をリードする男性キャラクターの2種類が、壁一面に向かい合うように表示され、利用者は任意でどちらかのキャラクターに話しかけ、会話の壁打ちを行う。3Dキャラクターによる回答はOpenAI社の生成AI「ChatGPT」を用いて行われ、ブラッシュアップされたアイディアは社内や社外の提案に役立てることができる。「LIFORK秋葉原」内の「RICOH PRISM」は、先月28日から予約受付を開始し、10月より一般向けのオープンを予定している。


Grand Central 東京・三田に「神効率オフィス」を構築
 セールス領域に特化した営業代行支援などの業務を行うGrand Central(名古屋市中区)は今月12日、東京都港区三田の「住友不動産東京三田サウスタワー」15階に新オフィスをオープンする。
 昨今のオフィスは自由出社・フリーアドレス・オンラインブースといった欧米流のオフィスがトレンドとなっている。こうしたオフィスは消費する床面積が小さく済み、経済的である一方で、「出社する意味を見出せない」という従業員側からの声も散見された。コロナ禍の収束とともに日本国内では出社頻度を上げる企業が増加しており、オフィス出社へのあこがれを抱く若者世代も増加している。そこで同社は欧米流のオフィスづくりではなく、独自路線の「神効率オフィス」によって、進化した「オフィス回帰」を実現すべく新オフィスの開発を行った。
 新オフィスのポイントは4点。1つ目の「全員に開かれた間取り」は、隔たりのない空間で常に誰が何をしているのかが分かる設計とし、周囲の会話が自然と耳に入る環境をつくることで成長の機会を増やす。2つ目の「効率化を極限まで実現」では、周囲でリモート会議が行われていても、音や声で一切邪魔されないオフィス内の仕組みを導入している。3つ目の「瞬時にオン・オフ切替え可能」では、執務エリア・共有エリアの間取りと壁や床の色の工夫で、瞬時にオンとオフの切替えを実現。1カ月に1度席替えを実施し、様々な社員との交流を促す。4つ目の「毎日出社したくなるオフィス」としては、黒を基調とした高級感のある内装を採用した。




週刊不動産経営編集部  YouTube