不動産トピックス

【9/16号・今週の最終面特集】新築オフィスビルの高稼働戦略 最新事例紹介

2024.09.16 11:29

「ビジネス×食」のシェアオフィス 駅近くのショールーム需要
コンセプトと需要掴み高稼働目指す
 建築費高騰の影響もあってか、新築ビルでは強気の設定賃料が見られる。しかし昨年から続き、継続的に新規オフィスは供給されている。リーシング競争が激しくなる中で、先を見据えた戦略が必要となってきた。潜在的な需要や新たなニーズを掴むことが出来た事例がある。

新築複合シェアオフィス「12 KANDA」開業
 リノベーション分譲事業や投資事業、シェア型賃貸住宅等の運営事業を手掛けるリビタ(東京都目黒区)は昨年12月、暮らしを自由にするオフィス「12 KANDA(ジュウニ カンダ)」を開業。先月27日には全館グランドオープンを迎えた。
 「12 KANDA」は東京メトロ銀座線「神田」駅から徒歩3分、都営新宿線「岩本町」駅からは徒歩4分の神田須田町二丁目に立地するオフィス・店舗で構成された新築ビル。規模は地上10階地下1階。延床面積は1944・39㎡。新築工事の事業主はリストデベロップメント(東京都港区)であったが、竣工時に当施設の企画プロデュースおよび運営管理を担当する同社が取得。以降、施設全体のリーシング・運営等を行ってきた。同ビルの賃貸区画は全66区画。2月から一部テナントの入居が始まり、27日時点で空中階の成約状況はおよそ7割。小規模オフィスやシェアオフィス、コワーキングスペース等で構成されていることから、ベンチャー・スタートアップの成長移転先や近隣企業の分室ニーズ、フリーランスの入居・利用も想定される。
 リビタでは2018年8月に「12 SHINJUKU」を開設。以降、暮らしを自由にするオフィス「12」シリーズを展開してきた。「12」シリーズは施設内に、リビング、ダイニング、キッチン、テラスなどの住機能の一部を持たせることで、新しい暮らし方(働き方)を知ることができるオフィス。21年9月に「12 SHINJUKU3CHOME」、同年10月には「12 NISHISHINJUKU」がオープン。入居者は契約したオフィス以外のラウンジ、LDKの相互利用が可能。気分や業務内容に合わせた柔軟な使い方、また家族やクライアントを招いてのイベント利用も可能となっている。
 「12 KANDA」は他シリーズの長所・機能性を実装しながら、「ビジネス×食」をテーマに誕生した。特に下層階には、街に開かれた飲食店の区画や飲食販売ができる業務用シェアキッチン、物販・ギャラリーなどに利用できる区画を用意した。業務用シェアキッチンは、菓子製造業許可および飲食店営業許可の取得が可能。日替わり利用もでき、新たなビジネスにチャレンジしたい人の「スモールスタートの場」、趣味による料理教室や料理の動画配信など、その他の多様なニーズにも対応できる。ちなみに飲食販売を想定したシェアキッチンは3区画用意。入居者に限らず誰でも気軽に立ち寄れる場所となっており、併設したテラススペースで飲食も可能だ。
 一方オフィスは個人用から、複数人利用できる小規模オフィス(40㎡・想定利用人数19名)まで様々なタイプを設置。部屋の大きさやレイアウト等に違いがあり、中には外階段と一緒になっているバルコニー側からアプローチする部屋もある。2階には入居者が自由に利用できるラウンジ、7階には入居者の家族も利用できるLDKを造った。ちなみに当施設には、お仕事ボードゲームの開発および同ゲームを使用しての社員研修を提案している遭遇設計(東京都文京区)が入居。代表取締役の広瀬眞之介氏は、「12 KANDA」の快適性や立地環境などを好み入居を決めた。
 リビタのオフィス事業部井上聡子氏は「『12』シリーズは、これまで既存物件のリニューアルで誕生してきましたが、新築複合シェアオフィスとして竣工したのは当ビルが初めてです。また『12 KANDA』は当社の保有物件ですが、長期保有が目的ではなく売却も視野に入れています。物件オーナーが変わってもシェアオフィスの運営は当社が担当することが条件です。まずは早期満室稼働を目指します」と語った。

maximシリーズ5棟目が今年6月竣工
 「区分所有オフィス(R)」を主軸に資産形成コンサルティングを行うボルテックス(東京都千代田区)は、都市部を中心に区分所有オフィスのブランド「VORT」シリーズを展開してきた。中でも規模、デザイン性、視認性、クオリティ共にハイスペックな物件は「maxim」と命名し、商品化を進めてきた。
 今年6月末にはmaximシリーズの5棟目の「VORT東京八重洲maxim」が竣工した。収益性・流動性に優れた最上位ブランド「maxim」でありながらJR「東京」駅八重洲口すぐの外堀通り沿いと、交通利便性の高さや視認性の良さが特徴。徒歩2分には東京メトロ「日本橋」駅があるなど、地下鉄を利用しての他エリアへの移動にも優れている。規模は地上14階地下1階建て。延床面積は5039・85㎡。用途は事務所・店舗で、基準階貸室面積は311・99㎡(94・37坪)。
 外観はガラスファサード。夏場の直射日光を抑制する軒や、高断熱と遮熱を両立したLow―E複層ガラスを採用した。またエントランスは江戸城の自然、「水」をコンセプトにデザイン。天井にエンボス加工を施した鏡面ステンレスパネルを配置することで、行き交う人々の日常を「水面に映し出す」様に表現できた。壁面には木目彫のデザインを施し、緑をリズミカルに配置。機械警備やICカード入退室など充実したセキュリティ体制も特徴となっている。
 1~5階は店舗フロア。整形無柱の空間に加え、水回りのレイアウトも自由度を高く設えた。要望に合わせた理想の店内設計が可能。角地を生かした2面採光のスケルトン構造により、視認性は高く集客にも貢献できる。自然光活用で省エネに貢献するライトシェルフも特徴だ。同社では主にクリニックでの入居を想定しており、実際にそのような問い合わせもある。
 一方6~14階はオフィスフロア。こちらも整形無柱の貸室となっており、自由なレイアウトが可能なグリッド式システム天井、CO2削減を考慮した個別空調&LED照明ゾーニング、光を贅沢に取り込む南と西面の2面採光、外気を手軽に取り入れられる手動開閉可能な自然換気窓、コミュニケーションを育むオープンパントリー等を用意した。同地に新築ビルで、1フロア100坪ほどのオフィスもないことから希少性の高さも特色となっている。
 営業本部 実需部の石川義朗統括部長は「既に数フロアで入居テナントが決定しています。店舗の成約スピードが早く、オフィスも徐々に決まっています。昨今は『東京』駅すぐのアクセス性から、自社オフィス兼ショールームや商談・懇親会も兼ねたスペース需要で入居する企業が見られます。クライアントをショールームへ招き、自社の商品やサービスを紹介しながら、眺めの良い場所で懇親を深めるなど、アクセス性に優れたオフィスにおける使い方・在り方も変化してきた様に感じます。既に区分所有オフィスとしての販売も開始しており、価格帯は当社最大クラスです」と語った。まずは早期満室を目指し、リーシング活動を進めている。


<物件概要>12 KANDA
所在地 東京都千代田区神田須田町2-3-12
延床面積 1944.39㎡
敷地面積 352.01㎡
規模 地上10階地下1階
構造 S造(一部RC造)
用途 事務所・店舗
竣工 2023年12月


<物件概要>VORT東京八重洲maxim
所在地 東京都中央区八重洲1-3-18
延床面積 5039.85㎡
敷地面積 430.00㎡
規模 地上14階地下1階
構造 S造(一部RC造)
用途 事務所・店舗
竣工 2024年6月




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