不動産トピックス

【11/11号・今週の最終面特集】事業用不動産の最新動向 話題の企業を紐解く

2024.11.11 10:59

USEN REALTY 商業ビル事業を本格的に開始 グループのソリューションと連携
 オーナーによって不動産事業は千差万別。グループシナジーを生かせる場合や自社のCRE戦略、外部へ貸し出すことで収益化を見据えて本格的に貸会議室を開始するなど、様々である。

商業ビルを3灯取得 不動産領域にも参入
 U―NEXT HOLDINGS(東京都品川区)のグループ会社USEN REALTY(東京都品川区)は2024年2月、商業ビル事業を本格的に開始した。取得物件は3棟。今後はDXソリューションやテナントリーシングまで一貫した運用を行っていく。
 USEN&U―NEXT GROUPは創業から60年以上、飲食店や小売店などを中心に店舗・施設運営に必要な付加価値ソリューションを提供してきた。幅広い業種・業界の顧客基盤を保有し、直近では全国約85万の店舗・施設(2023年8月期統合報告書)をクライアントに持つ。店舗サービス事業全体(約82万店舗・施設)の約31%は飲食店。これら店舗に対し、店舗BGMをはじめとする「DXソリューション」やインフラサービスである「通信・エネルギー」などのサービス領域を拡充し反響を得てきた。
 同グループでは店舗・施設運営における包括的な付加価値の提供を実現するため、商業インフラに必要不可欠な金融・不動産領域にも参入する。USEN REALTYは、今年7月31日に石川県金沢市の片町に位置する「オーロラビル」を取得。続けて8月30日に東京都目黒区の「Feel自由が丘ビル」、9月30日に京都市中京区の「CEO木屋町ビル」を取得した。
 USEN REALTYの北條伸行社長は「当社は『街を次へ』をテーマに不動産領域における中核会社として、商業ビル事業を本格的に開始しました。当社ならではの『Unique Yet Universal(独自性と普遍性の追求)』の視点で、日本全国の不動産を取得し、DXソリューションやテナントリーシングに至るまで一貫した運用を実施することで、都市や街のより良い未来を創造していく方針です」と語った。

1棟5~20億円ほど 今期計5~6棟を想定
 取得対象は商業ビル。「ウェルネス(フィットネスジム、ヨガスタジオ、クリニックなど)」、「オールデイダイニング(カフェ、レストランなど)」、「ナイトタイムエコノミー(居酒屋、バー、スナックなど)」の3つのカテゴリーに分け投資する。また対象エリアは全国。首都圏と地方でバランスよく、今期で計5~6棟(1棟5~20億円ほど)の取得を想定している。短期運用型の不動産取得ではなく、長期的なスタンスで不動産ポートフォリオを構築していく。2030年までに400億円規模の不動産ポートフォリオを目指す。
 同社は投資対象に対し持続可能なビル経営を推進すべく、テナントがより快適で生産性向上につながるような環境(サービス)を提供していく。DXソリューションを提案することで、店舗運営における業務の効率化、空き時間を店舗の将来に向けた有益な時間に充てることなどを可能にする。例えば、一緒にテナントのPRや集客の企画、ビル全体の回遊性向上も行う。ビルオーナーの立場でテナントとともに集客促進の施策を実施し、商業ビルの賑わいだけでなく街や地域社会の活性化に貢献していく。
 U―NEXT HOLDINGSの常務取締役CIO(投資責任者)馬淵将平氏は「不動産に関連する事業としてグループではテナント仲介業、家賃保証事業と広げてきました。これらに商業ビル事業の関連性・親和性は高く、かつコロナの影響・被害が全国の飲食店や小売店といったクライアントにも見られたため、ビルを持つことで彼らの手助け・サポートに繋がるとの思いも持ち始めました。訪日観光客が増加傾向にあるなかで集客支援や、電子決済に対応できない店舗へUSEN&U―NEXT GROUPのレジ・決済ソリューションなどを提供し、テナントの収益および経営効率を伸ばすことに繋げる。かつ店舗や施設の客足を伸ばすことで周辺地域の賑わい創出にも繋げ、エリア全体のブランド価値向上も実現します」と強調した。

自社のCRE戦略 新たに6物件追加
 東京コカ・コーラボトリングを前身とする丸仁ホールディングス(東京都港区)は、マンション、オフィスビル、商業施設などの不動産賃貸事業を主に営んでいる。
 同社は前身の関係上、各地域にかつて飲料の配送センター等であった土地や建物を所有している。これら企業不動産を活用したのが、現在のマンションやオフィスによる賃貸事業。各地域に適した物件へ建替えなどを行い、同物件の運営・管理を行ってきた。オフィスビルにおける代表例が2014年8月に建設した「オアーゼ芝浦MJビル」。同ビルは東京コカ・コーラボトリングとして日本におけるコカ・コーラ発祥の地に立地。JR「田町」駅から徒歩7~8分ほどの、旧海岸通り沿いで視認性に優れている。加えて同ビルは都市における世界共通のテーマである「スマートコミュニティ」、「省CO2」、「BCP」などの課題に対して取り組んだ当時最先端のオフィス。スペックや設備性能、電源設備等を含めたBCP対策にも注力した結果、テナントが長期にわたって入居し続けるビルとなった。
 今年8月5日に、自社保有物件として新たに6物件を追加した。「H&M 南青山WEST」、「イプセ四谷三丁目」、「HOUSE岩本町」、「バウスフラッツ日本橋馬喰町」、「バウスフラッツ高円寺」、「サミットストア新大塚千川通り店」で、「サミットストア新大塚千川通り店」はリテール。それ以外はレジデンスとなる。また10月24日には「オアーゼ文京大塚」が同社の賃貸物件に加わった。「オアーゼ文京大塚」は文京区大塚四丁目に立地し、教育施設の多い落ち着いた住環境のエリアに建つ。コンクリート造建物の重量感を感じさせないファサードデザインが周辺環境とも調和し、住み心地の良さを大切にしたファミリータイプ住戸中心のマンションだ。一方「サミットストア新大塚千川通り店」は、豊島区と文京区を繋ぐ千川通り沿いに立地するスーパーマーケット。近隣が商業地域でありながら閑静な住宅街も広がるため、商圏人口も厚いエリアに建っていることが特徴。規模は地上3階建てで、売場は1~2階となる。
 取締役 不動産事業部長の山嵜茂雄氏は「当社のCRE戦略として始まった当事業は、レジデンス19棟、商業施設2棟、オフィスビル2棟まで増えました。立地環境や周辺ニーズも踏まえた物件に仕上げ、また『住む+α』といったような、住宅機能だけでない魅力的な機能も加えています。今後もCRE戦略を中心に不動産事業を展開していきます」と語った。


未使用時に外部へ貸出 貸会議室を開始
 三甲(岐阜県瑞穂市、サンコー)は、2020年7月竣工の「三甲新橋ビル」7階で貸会議室「Share Working Studio 35」を運営している。
 プラスチック物流機器の製造・販売事業を展開している三甲は、全国都市部に10棟を超える収益ビルを運用している。「三甲新橋ビル」もその1棟。ビル内に会議室を設け、自社の未使用時に外部へ貸し出すことで物件の収益性を高めることを計画。ビル竣工と同時に貸会議室の運営を開始した。
 総務部の松本京氏は「竣工から4年弱しか経っておらず、設備の新しさは近隣でもトップクラスです。ビル壁面はガラスカーテンウォールであるため、窓側に面する会議室からの眺望・景色の良さも特徴となっています」とのこと。昨今は近隣企業を中心に、研修・セミナー・説明会等の利用が多い。スクール形式でのセミナー需要が戻っており稼働率も上がっている。場所によっては貸会議室の運営がビル賃貸の一助にもつながる。




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