不動産トピックス
【1/6号・今週の最終面特集】2025年不動産業界トレンド予測
2025.01.06 11:16
働き方の変化に対応した拠点やシステムの整備進む
2024年の不動産業界は、年始に能登地方で発生した地震を契機に災害対策が改めて見直され、AIに代表される新技術を活用した業務効率化が進んだ1年であった。果たして2025年は何がトレンドとなるか。流行の最先端をいち早くお届けする。
「働くを楽しむ」新感覚の施設 特定曜日を貸し出すプランも登場
トレンドワード・・・レンタルスペース×ショールーム
ワンズリノベーション(東京都港区)は、レンタルスペースとショールームを融合させた新業態の事業「Intro Place(イントロプレイス)」の運営を行っている。
同社は「人が前向きに働く社会を実現する」を企業ビジョンに掲げ、コロナ禍によって人々の働き方に変化が生じたことに着目。会社とも自宅とも異なるサードプレイスとして「Intro Place」を開設した。施設は都営大江戸線「麻布十番」駅より徒歩5分に位置し、室内は6~8名程度まで収容可能(オフィス利用の適正人数は4名程度)。仕事やミーティングに適したオフィス什器を設置しプライベートオフィスとして利用できるほか、パーティ等での利用も可能。室内にはオーディオハート社製のスピーカー内蔵ソファ、エムズシステム社製の高音質スピーカーが設置されており、心地よい空間を演出するほか映画館のような音質で映像を楽しむことができるのも大きな特徴。これらの商品はその場で購入も可能なショールームとしても同施設は機能する。
昨年12月からは、指定の曜日を毎週1日貸切で利用できるウィークリーオフィスプランの提供を開始した。その理由について、ワンズリノベーション取締役の小林正剛氏は次のように話す。
「現在でもオフィス以外の場所でのリモートワークを中心に仕事をされる方が一定数おられます。一方で、組織やチームの一体感を高めるためにオフィスに集うことは有用であると、コロナ禍をきっかけに再認識されました。そのため、既存のオフィスではなく週1回程度集まることができる場所へのニーズがあるのではないかと考えました」
ウィークリーオフィスプランの月額料金は2万9700円(税込)(オープン記念価格として1月31日までの申し込みが対象)で、月曜から金曜までの平日5日間のうち、指定した曜日の8~18時を貸切で利用することができる。自宅やオフィスでの仕事に飽きたスタートアップやフリーランスなど、1名から少人数の利用層を想定しているとのことで、「働くを楽しむ」という施設コンセプトに沿った秘密基地のような空間を提供する。
小林氏は今後の展開について「『Intro Place』のフランチャイズ展開も見据えています。内装やデザイン面での統一的な基準は特段ありません。自分のこだわりの書斎やホームシアターを持ちたい方におすすめです。ビジネスモデルとセットで日々のランニングコストを抑えて自分好みのサードプレイスを作りませんか」と述べている。
徐々に広がる隙間時間の活用 ビルメン業界の人手不足解消に期待
トレンドワード・・・ギグワーカー
ビルメンテナンス業界では年々、清掃スタッフの確保が難しくなっている。常時勤務するスタッフの補填として注目を浴びているのが、隙間時間に働くギグワーカーだ。
ギグワーカーとは、ネット上のプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負う労働者のこと。業務委託契約で働くフリーランスの一種で、自身の空き時間を利用し副業として稼ぐケースもある。主に料理等の宅配サービスの配達員やライドシェアの運転手、データ入力を行う社外スタッフなどが該当する。建物の日常清掃や点検業務を対象としたプラットフォームも既に存在する。マンション・アパートの共用部での日常清掃を依頼するオーナーもおり、徐々に不動産業界でも浸透している。
一方でミスマッチや課題もある。日常清掃業務を依頼するビルオーナーは毎日指定の時間帯に「○○を清掃して欲しい」と、時間・場所を決めることが多い。しかし、ギグワーカーは隙間時間に働く仕組み。時間の指定かつ毎日継続する勤務体系は難しい。担当スタッフが変わる頻度も高く、ビルによって異なる清掃業務での決まり事やルールを変更の度に周知させる必要がある。これら課題がありながらギグワーカーの需要はここ数年で急激に伸びている。それだけ清掃スタッフの確保にビルメンテナンス業界、およびオーナーも苦慮していることが分かる。
マンション・オフィスの日常清掃に関する講座・検定等を行う日常清掃協会(さいたま市南区)の鈴木範之代表理事は「ギグワーカーは選択肢の1つだと思います。定期清掃の箇所や検針作業など、毎日行う必要のない業務での選択肢に好ましいと思います。『何時から何時までに行ってください』とギグワーカーに配慮した自由度を持たせることで、マッチングも上手く進むでしょう」と語った。鈴木氏はマンション・ビルのメンテナンス業務を行うたてものサービス(さいたま市南区)の代表取締役でもある。過去にはギグワーカーとして働いた経験も持ち、今後発生する可能性の高い問題についても次のように指摘した。
「ビルメンテナンス業界でも人手不足の影響から、毎日行う業務の単価が値上がりしています。今後は過度に割安なメンテナンス費を依頼するオーナーは、業者から敬遠されるでしょう。また清掃作業をはじめとするメンテナンス作業全般において、柔軟性がないオーナーも難しいです。業者やギグワーカーに寄り添う姿勢がないと、清掃スタッフが見つからない事態も考えられます。今後は駐車場代も課題です。ギグワーカーに清掃を依頼した場合、移動費や駐車場料金も発生します。建物の敷地内や周辺に業者専用の駐車スペースを確保するなど、ワーカー目線の対応力も必要になります」(鈴木氏)
今後協会では「ToILET清掃検定」等の資格取得のアピールや清掃ノウハウを知ることができるショート動画の作成・配信なども継続して行っていく。現在会員数200名以上。今後は1000名以上を目指し、1000名を超えたタイミングで紹介型のプラットフォーム開設も視野に入れている。全国規模でスタッフが提供できる環境の構築を考えている。
そのほかの2025年不動産業界トレンドワード
○大阪・関西万博
4月13日~10月13日の半年間にわたり、大阪・夢洲で開催される。日本での国際博覧会は20年ぶり、大阪での開催は1970年以来55年ぶり2回目となる。158の国と地域が参加し、約2820万人の来場を想定している。不動産業界では主にホテル領域において宿泊需要増加による活性化が期待される。
○レジリエンス認証
地震や気候変動を背景とした自然災害など、社会インフラのレジリエンス強化は不可欠。不動産のレジリエンス力の認証にも注目が集まる。国内では日本不動産研究所が23年に「ResReal」をスタート。24年12月までに35物件が認証を受けている。テナント企業のBCPの観点から、入居検討時にこういった認証がチェックされる可能性もある。
○AM会社がホテルオペレーター進出
不動産投資クラウドファンディングを展開するクリアルがホテル運営会社を新設。1月には沖縄に独自ブランドのホテルをオープンする。コロナ禍が収束し、ホテルに投資と宿泊客が戻る。オペレーションも担うことで、アセットマネジメントとのシナジーを図る手法は他のAM会社も追随するかもしれない。
○スポーツ複合型施設
2023年の「北海道ボールパークFビレッジ」に代表される、スポーツ競技施設と商業や宿泊等の機能を複合させた施設の開発が相次いでいる。3月には東京・稲城で球場と水族館が一体化した「東京ジャイアンツタウン」のうち「ジャイアンツタウン スタジアム」が開業。東京・青海ではBリーグ・アルバルク東京のホームアリーナ「トヨタアリーナ東京」が今秋完成予定。