不動産トピックス

【1/13号・今週の最終面特集】ビルオーナー必見 戦略的なテナント誘致「LM(リーシングマネジメント)」

2025.01.14 11:16

自社強みのPM生かしたLM展開 プロパティマネジャーの目線でテナント誘致をサポート
会員制のセットアップオフィス検索サイト「RAKNA」年間100件の成約 会員24年12月末時点で1万名
 一般的なテナント誘致とは違う、コンサル目線で行うLM(リーシングマネジメント)業務。昨今リーシングの難しさから待ちの姿勢ではなく、攻めの姿勢で行うLMに注目が集まってきた。PM会社も受託管理棟数を増やす目的で積極的にPRするなど、LMにおける熾烈な競争が続いている。

セットアップ特化のLM 確度の高い企業へPR
 賃貸オフィス専門の仲介会社・スリースター(東京都港区)は、セットアップオフィスに特化したリーシングマネジメント(以下LM)で差別化を図り、実績と知名度を高めてきた。
 同社は賃貸オフィスの検索サイト「officetar(オフィスター)」、居抜きオフィス検索サイト「vivit(ビビット)」、セットアップオフィス検索サイト「RAKNA(ラクナ)」、リノベーションオフィスを検索・閲覧できる「DOT(デザイナーズオフィストーキョー)」など、この他にもテーマに特化したウェブサービスを多数展開している。
 これらのサイト運営や普段のオフィス仲介業とは別に、LM事業も展開している。特徴はセットアップオフィスに特化していること。一般的なオフィス仲介業務および不動産店舗は、基本待ちの姿勢。マイソクの作成やレインズの登録を行い、反響があればオフィスの内覧に応じる。
 対してLMは、PM会社等が受託管理物件に対して行うリーシング業務。市場調査結果を踏まえた募集戦略の策定や募集資料の作成、仲介業者へのメール配信、かつ業者向けの内覧会開催なども行う。昨今は類似のサービスをオフィス仲介業者が行っているケースもあり、LM自体の認知度も高まってきた。
 一方、同社は一般的なLM業務も踏まえつつセットアップオフィスに対象を絞り、エンドテナントへ直接提案している。エンドテナントのみが利用できる会員制のセットアップオフィス検索サイト「RAKNA(ラクナ)」を運営。セットアップオフィスへの移転を検討する会員企業の代表などに対し、メール等を活用したプロモーションを実施。加えて受託物件ごとにビジュアルを生かした資料も作成する。パースや写真を多用した募集資料で、企業は移転後のイメージなどが掴みやすい。年間100件の成約実績を持ち、会員は24年12月末時点で1万名ほど。毎月約200名が新たに登録し、会員は現在も増加傾向にある。
 また建築資材や施工費の高騰が影響し、新築ビルやリニューアル物件でも相場価格より高額に賃料を設定しないと、採算の合わない事例が増えてきた。賃料を高めに設定でき、早期にテナントを確保しやすい手法がセットアップオフィス。しかしデベロッパーを中心に、新たにセットアップオフィスを展開し始めた企業も多い。競合物件に埋もれないためには、ノウハウや実績を持つ企業と一緒に行うことが重要となる。
 セットアップオフィス事業部の福田勇人部長は「他社とは違い、セットアップオフィスへの移転を求める『確度の高い』人・企業へ向けたプロモーションを得意としています。セットアップオフィスでは、賃貸借契約書の作成支援や、原状回復時のトラブル防止策を提供しています。例えば、什器や設備を消耗品とみなす基準を事前に設定することで、トラブルのリスクを軽減します。また、設計段階から関わることで、プロモーションまで一貫してサポートできる体制が整っています。今後もデベロッパーとの連携を強化し、設計からリーシング、プロモーションまで一貫したサポート体制をさらに拡充していきます」と語った。

リーシング単体の業務開始 現在のLM業務の原点に
 2023年4月から日本管財HD(東京都中央区)の100%子会社となった東京キャピタルマネジメント(東京都港区)。自社の強みであるプロパティマネジメント(PM)業務を生かして、リーシングマネジメント(LM)業務の実績も着実に伸ばしてきた。
 同社は2002年に日本管財と三菱信託銀行の共同出資で、土地信託事業のアウトソース先及びPM専業の会社「日本プロパティ・ソリューションズ」として誕生した。以後、様々な変遷を経て、21年7月には東京キャピタルマネジメントと日本プロパティ・ソリューションズが合併。更に一昨年4月には日本管財HDのグループ傘下となった。現在は全国5拠点、多様なアセットへの対応力を強みに展開している。事業はオフィスビルを中心に収益の最大化と、物件の資産価値向上および維持を目的としたPM業務。コストや工期、品質などを発注者の目線で主体的に進めるコンストラクションマネジメント(CM)業務。投資家ニーズを踏まえた金融商品として、資産を運用・管理するアセットマネジメント(AM)業務。更に月極駐車場・施設型駐車場を運営する駐車場運営事業も展開してきた。
 以前からビルオーナーには、物件のPMではなくテナント誘致を単体で求められる場合があった。同社ではPMで培ったノウハウや知見を生かして、テナントリーシングを単体の業務として展開開始。これが現在のLM業務のスタートとなり、実績を増やしてきた。特徴は20年以上にも及ぶPMとしての実績と、都内のオフィスや店舗に強い仲介会社とのリレーション。それら企業との情報共有やリーシングにおける連携等を長年にわたって行ってきた。テナントの入居工事もオーナーに代わり最後までサポートが可能。一般的な仲介会社であれば、移転入居時のサポートまでは行わないが、同社ではオーナーと業務範囲を決め、工事内容の確認やテナント退去時の原状回復を規定する等、将来的なトラブルを抑えることも可能である。移転完了(業務開始)となる期日まで入居テナントの移転業務を支える。
 またLMではPM業務の一部を活用している。単にテナントを誘致するだけでなく、PMでの知見を生かして賃貸収入の増額や長期安定稼働および早期空室改善などにも繋げてきた。例えば、リーシング対象のフロアが「オフィス用途で坪2万円」とした場合に、店舗への用途変更をオーナーに提案。同地であると「店舗で坪3万円」で貸せる環境から、成約後は賃貸収入の増額が実現した。空室改善が進まないビルの場合、募集物件の状態(主に陳腐化)と募集賃料のミスマッチなどがある。その様な状態をオーナーが気づかずに募集し続けると空室の長期化に繋がるが、同社が携わると陳腐化の改善提案や募集賃料の設定・修正なども可能だ。CMも展開しているため改修コストも踏まえての賃料設定などができる。
 執行役員 プロパティマネジメント本部の鈴木仁副本部長は「テナントや仲介業者との交渉は、直接オーナーと交渉するのではなく、PMの知見を持った当社の方が、賃貸条件面の本音など有益な情報を多く取れることがあり、スムーズに進む場合もあります。現在社員数は130名弱で、その内およそ90名がPM業務のスタッフです。同社ではPMと並行して、今後もLMに注力していく方針です。不動産資産の価値を高めるプロパティマネジャーの目線で今後もオーナーのテナント誘致をサポートしていきます」と語った。


今後は「攻め」の姿勢でテナント誘致
 昨今のLMは単に空室を解消するだけでなく、その後のビル経営も見据えたマネジメントに特化していることが多い。例えば現状の募集賃料からの値上げと、それに伴う対策の提案。また新築・改修物件において今後のリーシング業務も見据えたコンセプトづくり・付加価値形成など多岐にわたる。もちろん従前からある、リーシングツールの作成や内見対応、近隣マーケットの調査や調査結果を踏まえての提案・アドバイス等も含まれる。また従来のテナント募集であると基本は「待ち」姿勢。今後は早期稼働および満室が重要となるため、「攻め」の姿勢でテナント誘致に動かないと空室が長期化する可能性もある。そのためには専門的な知識や最新のトレンド等の把握も必要。オーナーは、これら知識と実績を兼ね備えたLMを行う企業の協力が今後重要となってくる。




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