不動産トピックス

【4/14号・今週の最終面特集】土地活用のトレンド追跡

2025.04.07 10:55

競合相手少ない領域で高い収益性を確保 地域の活性化にも寄与する活用法
スペースを無駄な利用 再エネの活用も可能に
 相続や購入によって取得した土地は、所有しているだけで維持費や納税などによって費用がかかる。所有者の負担を抑えながら土地を有効活用できるアイディアを紹介する。

職住近接のシェアオフィス 駅前立地でなくとも高収益
 コスモスイニシア(東京都港区)は、職住近接を実現するシェアオフィスブランド「MID POINT(ミッドポイント)」の新拠点として、本年10月に学芸大学、2026年3月に本郷三丁目、4月に駒込でオープンする。
 「MID POINT」は、「住居と職場の中間点」、「企業の成長過程における新たなステージへの通過点」をテーマに同社が展開する、1名から利用可能なシェアオフィスである。2018年にオープンした第1号拠点の「MID POINT目黒不動前」を皮切りに、東京都および神奈川県で9店舗を展開している。
 同施設は24時間・365日利用が可能で、住所利用・法人登記、ポスト利用が可能な個室プランやブースプランに加え、ラウンジを利用できるコワーキングプランを用意。また施設内ではコミュニティマネージャーが駐在し、ゆるやかなコミュニティの形成や利用者間のコラボレーションを促進するべく、各種イベントなども開催している。
 昨今は不動産事業者の土地活用の場合でも、人手不足や建設費高騰に伴う計画の見直しまたは延期に追い込まれるケースが増えている。「MID POINT」は職住近接の立地を強みとしているため、土地活用方法に迷いがちな駅から3~5分の立地でも、シェアオフィス誘致による収益最大化を実現し、地域住民をターゲットとした少人数個室ならではの安定的な稼働を見込むことができる。またオフィス空間の提供だけでなく、利用者同士のコミュニティ形成や地域への雇用創出など、地域に根差した中長期的な運営を実現する。
 今回オープンを予定している学芸大学、本郷三丁目、駒込の新拠点は、それぞれ土地活用の収益最大化や地域活性化への寄与などの観点がオーナーにとってプラスの検討要素となり、オープンが決定した。「MID POINT学芸大学」のオープンの決め手について、オーナーである大和ハウス工業(大阪市北区)の東京本店流通店舗事業部第三事業営業課、鈴木ゆりか氏はこう述べる。
 「現在建設中の『MID POINT学芸大学』は、駅東口から徒歩3分とはいえ学芸大学東口商店街から外れた立地で、飲食店舗やホテルなどの商業エリアと、マンションが立ち並ぶ住宅エリアの狭間にあります。当社でも、そのような立地ではどのように土地を活用すべきかあらゆる検討を重ねてまいりました。『MID POINT』であれば、地域住民の方に向けたシェアオフィスのため駅前立地でなくても検討いただけること、賃貸マンションよりも高収益で事業計画を立てられることにメリットを感じています」
 コスモスイニシアでは2031年までに40拠点の開設を目指し、東京都を中心に都心から職住近接地にかけて事業展開を継続するとしている。
 みなとテックス(東京都中野区)が昨年7月、土地活用提案の一環として立ち上げたガレージ・倉庫建築専門の新ブランド「Feel Good Cube」が、東京都西部の多摩地域を中心に実績を伸ばしつつある。
 この「Feel Good Cube」は、農業従事者向けの農業用倉庫や自動車整備用の工場、カーポート、小規模店舗など、様々な用途で需要のあるガレージ・倉庫建築の賃貸物件としての運用提案を行うもの。同社の清野恭弘社長によれば、200万円からの低投資で土地活用が可能なほか、表面利回りが高い、運用コストが少ない、競合が少なく値崩れが起きづらいといったメリットがある。
 みなとテックスは、これまで電気・空調工事や省エネ対策の提案などを中心に事業を展開してきた。清野氏は「省エネ関連の多種多様な工事を手掛ける中で、ガレージや中小規模の倉庫の建築ニーズが高いと同時に、対応できる工務店は限定されているという現状があります。そこで当社はメーカー協力のもと幅広いタイプの商品を取り揃えた新ブランドとして『Feel Good Cube』を発足しました」と話す。
 ブランドのコンセプトは「安価で高品質、短工期」。部材を提供するメーカーや施工を担当する職人を、建築の目線から選定。一定の供給数の確保が行えることで原価を落としつつも、優れた技能を有する職人を起用することで無駄のない施工を実現し、コストダウンにつなげている。商品はカクイチ(長野県長野市)をはじめ実績豊富なメーカーのガレージ・倉庫を取り扱い、施工に際しては工場で加工された部材を現場で組み立てるため、最短2日で工事が完了する。清野氏は従来の電気・空調工事業との連携も見据え、ガレージ・倉庫の屋上に太陽光パネルを設置した再生可能エネルギーの活用や蓄電池の設置をオプションで提案していくとのこと。駅から離れた立地など収益化が難しく遊休化した土地の有効活用の手法として注目が集まっている。


自己利用もできる住宅を開発
家にいない時間は貸し出して収益化
 アグレ都市デザイン(東京都新宿区)と1棟貸し宿泊施設(バケーションレンタル)の開業支援コンサルティングを行うハウスバード(東京都新宿区)は、1日から貸せる家「Hours House高砂」の販売を開始した。
 「Hours House」は、「住宅とホテルの魅力を融合させた、新たな投資用不動産ブランド」で、「Hours House高砂」はその第1号物件となる。アグレ都市デザインの提供する宅地開発力と、ハウスバードの宿の立ち上げ実績による経験値を掛け合わせた「パッケージ型開業支援サービス」により、自己利用も楽しめる宿泊施設の運用を、最小限の労力で開始することができる。遠方にいながら東京都内に別荘を所有し、家にいない時間はホテルとして貸し出すことで収益化することも可能である。集客から顧客対応、清掃業務といった運営面や、売上計画、原価・販促管理費の管理といった宿泊事業の収支管理までワンストップでサポートする。
 「Hours House高砂」は東京都葛飾区高砂に所在し、最寄りの京成本線「京成高砂」駅からは徒歩7分。地上2階建ての住宅2棟が並び立つ形で、土地面積の合計は128・94㎡、建物面積の合計は164・52㎡となっている。




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